「時間が足りなくて評価が終わらない…問題点が分からない…どうしたらいいの?」
そんな悩みを解決します。
「理学療法」を行うために「評価」は必須であり、評価が出来なければ理学療法ができないと言っても過言ではありません。
理学療法評価は問診や動作観察から問題点を予想する「トップダウン方式」を推奨します。
その理由は
- 真の問題点に気づきやすい
- 評価項目を絞れる
- スピーディに評価できる
という利点があるから。
ここでは、トップダウン方式の評価の方法をお伝えし、限られた時間の臨床実習で素早く・適切な問題点抽出ができるように手助けをしていきます。
【トップダウン】理学療法評価の過程
理学療法評価の過程は
- 問診
- 動作観察
- 問題点の予想
- 理学療法検査
- 問題点抽出
- 理学療法の実施
の順で流れていきます。
【step1】問診
理学療法評価で最初に行う事は「問診」です。
問診では、患者にとって何が問題なのか?を、能力障害のレベルで考えていきます。
能力障害とは
人間として正常と見なされる方法や範囲で活動していく能力のなんらかの制限や欠如のこと。
問診では、患者の症状の重症度や社会的背景を考慮し、本当に問題となっている能力障害を見つけ、抽出することが必要となります。
例えば、問診で患者が「歩きたい」という訴えをしたとします。
しかし、患者が発症直後で寝たきりだった場合、本当の能力障害は「歩行困難」ではなく「起き上がり困難」や「座位保困難」であるといえます。
ここに気づけると、評価すべきは「歩行や立位保持の評価」ではなく「起き上がり動作や座位の耐久性の評価」であると気づき、無駄な評価を減らすことが出来ます。
【step2】動作観察
問診が終わったら、次はその能力障害に関連する動作を観察します。
動作観察から「機能障害」の問題を抽出することが出来ます。
機能障害とは
心理的、生理的又は解剖的な構造又は機能のなんらかの喪失又は異常。
例えば、立ち上がり動作を評価する場合、大腿四頭筋のMMTを検査するだけでは不十分です。
体幹の動きや立ち直り反応、重心移動まで見て行かなければなりません。
このように、動作観察を正確に行うのは非常に難しいのですが、トップダウン方式の評価では「動作観察」が非常に重要になってくるので押さえておきたいポイントですね。

【step3】問題点の予想
動作観察を終えたら、その動作がなぜそうなってしまうのか?を予想します。
立ち会がり動作ができない場合、なぜ立てないのか?を考えていきます。
- 重心を前方に移動できていない?
- 大腿四頭筋の筋力低下?
- 頸部の立ち直り反応?
- バランス能力の低下?
もちろん全部かもしれません。
次にその予想が本当かどうかを確かめていきます。

【step4】理学療法検査
問題点の予想を立てた後は、その予想が正しいか否かを確認する作業に入ります。
そう、理学療法評価ですね。
立ち上がりができない問題に対し、適切な評価を実施していきます。
- 重心を前方に移動できていない?→FRTや体幹の屈曲ROM-t
- 大腿四頭筋の筋力低下?→大腿四頭筋のMMT
- 頸部の立ち直り反応?→平衡反応などの検査
- バランス能力の低下?→FRTやBBSなど
その結果を検査用紙に記載していきます。
【step5】問題点抽出
実際に検査した結果、標準(正常な反応や参考可動域、カットオフ値など)から逸脱したものを探してみてください。
これが「問題点」です。
1つかもしれませんし、複数あるかもしれませんが、全てを抽出していきます。
ここで、自分が立てた「問題点の予想」に対して検査結果で裏付けされた場合、自分の予想が正しかったことが証明されます。
証明されれば、あとはその問題点を改善させていくのみ。
【step6】理学療法の実施
問題点抽出した項目を改善させるための理学療法を実施していきます。
- FRTがカットオフ以下→座位・立位リーチ練習
- 大腿四頭筋MMT3→leg-extension
- 立ち直り反応の低下→原始反射から再構築
- BBSがカットオフ以下→減点項目の動作を練習
様々な方法があると思いますが、改善したか否かを確認するために「中間評価」は必ず実施してください。
例えば、大腿四頭筋のMMTが3から4になったにも関わらず立ち上がりができない場合、介入すべきポイントは大腿四頭筋以外かもしれません。
その都度確認することをおすすめします。
まとめ
理学療法士が問題点を抽出するには以下の流れで実施していきます。
- 問診から能力障害(動作)の問題点を探す
- 動作から機能障害(筋力や可動域など)の問題点を予想する
- 予想された問題点を評価し、裏付けを取る
- 問題点を改善するプログラムを立て、実行する
- 改善度を再評価し、動作に繋がるか確認する
問題点を予測するには、早く・正確に問題点抽出をしていかなければなりません。
正常動作と患者の動作で何が違うのか?をすばやく確認し、予測するためにはトップダウン方式の評価をすべきです。
逆に、疾患から考えられる評価を全て実施して問題点を探す「ボトムアップ方式」では問題点を予測しながら評価していく事ができないので、時間のない臨床実習の現場では不利になると言えます。