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理学療法士の臨床実習は学年で何が違う?見学・評価・治療実習の指導内容を解説

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理学療法士の臨床実習は、学生の学年や実習段階によって指導する内容が異なります。

当然ですが、1年生と4年生を同じ基準で指導するわけではありません。

学生がこれまでに学んできた知識や技術、経験に合わせて、実習指導者(バイザー)が到達目標を設定する必要があります。

 

では、実習指導者は学生に対して、どのような目標を設定し、何を身につけてもらいたいと考えているのでしょうか。

これから臨床実習に行く理学療法学生にとっても、バイザーの指導方針を知っておくことは、実習への取り組み方を考える参考になると思います。

 

今回は、理学療法士の臨床実習における見学・評価・治療実習の違いと、それぞれの段階で指導したい内容について解説します。

 

理学療法士の臨床実習は学年によって内容が違う

理学療法士の臨床実習には、見学実習・評価実習・治療実習などがあり、それぞれの段階で学生に求められる知識や技術が異なります。

 

見学実習

見学実習は、理学療法士が働く実際の臨床現場を見学し、仕事の内容や患者さんとの関わり方を学ぶことが主な目的です。

患者さんに直接触れて評価や治療を行う機会は限られますが、学校で学んだ知識が臨床でどのように活用されているのかを知る貴重な機会になります。

個人的には、この時期の実習が一番楽しかったりするのではないかと思います。

 

評価実習

評価実習では、学校で学んできた評価方法を使って患者さんの身体機能や動作能力を調べ、結果を統合と解釈につなげていきます。

関節可動域測定(ROM-T)、徒手筋力検査(MMT)、感覚検査、動作分析など、患者さんの状態に合わせて必要な評価を実施します。

多くの学生が、ここで最初の大きな挫折を経験するのではないでしょうか。

 

授業や実技練習で学んできた評価方法も、実際の患者さんを前にするとうまくできないことがあります。検査の手順を覚えていても、患者さんの状態によっては教科書どおりに進められず、評価結果の解釈に悩むことも少なくありません。

また、評価している様子をバイザーに見られる機会も多いため、学生にとってはかなり緊張する時期ですね。

 

治療実習

治療実習では、患者さんの評価だけでなく、評価結果をもとに治療プログラムを立案し、実際に治療まで行います。

 

一般的には、次のような流れで実習が進みます。

  1. 初期評価
  2. 統合と解釈・考察
  3. 治療プログラムの立案と実施
  4. 中間評価
  5. 治療内容の修正
  6. 最終評価
  7. レポートの作成・提出

評価実習を乗り越えた学生も、治療実習で2回目の壁にぶつかることがあります。

 

臨床運動学や病理学、日常生活活動(ADL)などを学校で学んでいても、実際に担当する患者さんの状態は複雑で、これまでの知識だけでは対応が難しい場合も少なくありません。

患者さんの身体機能や生活背景を総合的に考えながら、適切な治療方法を選択する必要があります。

実際、私自身も学生時代の治療実習は、もうやりたくないと思うほど大変でした。

 

臨床実習の到達目標はカリキュラムから確認しよう

実習には、それぞれの段階に応じた到達目標が設定されています。

大きく分けると見学・評価・治療という段階がありますが、具体的な目標は養成校のカリキュラムや実習内容によって異なります。

実習指導者も、学生の知識や技術、経験に合わせて具体的な指導目標を設定していきます。

 

たとえば、整形外科疾患の患者さんを担当して評価から治療プログラムの立案まで経験してもらうことや、複数の患者さんのリハビリテーションを見学してもらうことなどが考えられます。

ただし、実習指導者は初めて会う学生の能力や得意分野を詳しく知っているわけではありません。

 

学生の特徴を知らなければ適切な目標は立てられない

そこで、実習指導者は養成校の教員に学生の特徴や学習状況を確認します。

そのための話し合いの場をバイザー会議と呼んだり、私の勤務先ではCE会議と呼んだりしていました。

ここでは、実習指導者が指導したい内容と、養成校が求める到達目標をすり合わせます。また、学生の得意分野や苦手なこと、指導上の注意点なども共有されます。

 

私が困る情報の一つが「特徴は特になし」という回答です。

何年も学校に通っているにもかかわらず、教員から「特にありません。普通の学生です」と言われてしまうと、実習指導者としても学生の特徴をつかみにくくなります。

学生自身も、これまで頑張ってきたことや興味のある分野を先生に伝えておくと、実習先で自分の強みを活かしやすくなるでしょう。

 

【臨床参加型実習】見学実習で指導したいこと

1年生や2年生など、初めて臨床実習に参加する学生には、理学療法士という職業への興味や関心を高めてもらうことを重視しています。

この時期は専門知識がまだ十分ではないため、学生の好奇心を刺激するような指導が大切です。

 

たとえば、私が理学療法士になったきっかけや、仕事をしていて楽しいと感じたことなどを話します。反対に、仕事の大変さについても伝えるようにしています。

理学療法士は治療だけをしていればよい仕事ではありません。カルテや書類の作成、電話対応、他職種との連携など、さまざまな業務があります。

こうした仕事の良い面と大変な面を両方伝えることも、見学実習の大切な役割だと考えています。

 

学校で学んだ知識と臨床現場を結びつける

見学実習では、学校で学んできた知識が臨床でどのように活用されているのかを理解してもらうことも重要です。

たとえば、寝たきりの患者さんのリハビリテーションを見学してもらい、次のように質問します。

「この患者さんは足がとても細くなっていて、関節も曲がった状態になっていますよね。どうしてだと思いますか?」

答えられる学生もいますが、まだ知識が十分に身についていない学生は、なかなか答えられないこともあります。

 

そこで、私は「これは廃用症候群といって、活動量が低下することで筋力や身体機能が低下してしまう状態なんですよ」と説明します。

すると、「ああ、授業で習ったことがある!」という表情をしてくれる学生もいます。

この時期の学生は、知識が少しずつ身についているものの、自分の考えに自信を持てていないことも多くあります。そのため、答えられない場合は長時間待つのではなく、こちらから答えを伝えて関連する知識を説明するとよいでしょう。

 

学校で学んだことが臨床で役立つと実感できれば、今後の学習意欲にもつながります。

見学実習では、理学療法士の仕事に興味を持ち、将来こんなセラピストになりたいと思ってもらえるような経験を提供することが大切です。

 

【臨床参加型実習】評価実習で指導したいこと

評価実習では、患者さんの身体機能や動作能力を評価します。

しかし、学生はまだ「この患者さんには、この評価が必要だ」と考えて検査を選択することが難しく、さまざまな評価を実施することがあります。

ただ、私は最初のうちは、それでもよいと考えています。

 

多くの評価を経験することで、それぞれの検査から何が分かるのかを学べます。そして、レポートを作成し、統合と解釈を進める段階で、必要だった評価と不要だった評価が少しずつ見えてくるでしょう。

こうした経験を通して、患者さんの状態に応じて必要な評価を選択する力を身につけてもらいたいと思っています。

また、実習期間は3〜4週間程度と限られていることも多いため、可能な限り初期評価と最終評価の両方を経験できるように調整する必要があります。

 

初期評価と最終評価を比較することで、患者さんの身体機能や動作能力にどのような変化があったのかを確認できます。

評価実習では、検査を実施する技術だけでなく、評価結果から患者さんの状態を把握し、その変化に気づく力を身につけることが重要です。

 

学生が良い実習を経験するにはコミュニケーションが大切

評価実習では、評価技術だけでなく、患者さんとのコミュニケーションについても指導する必要があります。

評価を実施する際には、目的や方法を事前に説明し、患者さんの同意を得ることが大切です。

 

【評価実習のポイント】

患者さんは医学やリハビリテーションの専門家ではないため、どのような検査を受けるのか不安や疑問を感じることがあります。

そのため、専門用語を並べるのではなく、患者さんにも理解できる言葉で説明し、安心して評価を受けてもらえるように配慮しましょう。

学生にとって、年齢や生活環境が異なる患者さんと継続的に関わることは大きな挑戦です。何気ない発言で患者さんを怒らせたり、評価や治療を拒否されたりすることもあります。

そうした場面では、実習指導者が状況を確認し、適切に対応できるようフォローしなければなりません。

コミュニケーション能力を高めるための指導ができるかどうかは、評価実習を充実させるうえで重要なポイントだと思います。

 

【臨床参加型実習】治療実習で指導したいこと

治療実習になると、実習指導者によって学生への指導方法や目標が大きく変わってきます。

学生自身に考えさせることを重視するセラピストもいれば、自分の考え方や治療方法を丁寧に教えるセラピストもいます。

そのため、実習の進め方や厳しさは、担当するバイザーの指導方針によっても変わるでしょう。

 

学生への指導方法は実習指導者によって変わる

私が治療実習で行っている指導方法は、あえて名前をつけるなら「指示・放任型」といったところでしょうか。

たとえば、学生に次のような指示を出します。

「両下肢のリラクゼーションとストレッチ、関節可動域運動(ROM-ex)を行ってください。そのあとに、大殿筋と大腿四頭筋の筋力強化運動を実施してください。時間は20分程度でお願いします」

このように治療の大まかな内容と時間を伝えたあとは、基本的に学生に任せるようにしています。

 

もちろん、事前に実技指導を行い、実施後には必要に応じて修正点を伝えます。

こうすることで、学生自身が考えながら治療を組み立てる機会を作れると考えています。

 

学生主体で治療できる環境を整えよう

バイザーが細かく指示を出し、そのとおりに学生が治療を実施するだけでは、学生自身が考えて治療を行ったとはいえません。

たとえば、中華の鉄人が作ったレシピを使い、弟子に細かく指示して料理を完成させたとします。

その料理が提供されたとしても、実際に作ったのは弟子です。

同じように、バイザーが治療内容を細かく決めてしまえば、学生自身が考えた治療とはいえなくなります。

 

そのため、私は大まかな指示だけを出し、具体的な治療の進め方は学生自身に考えてもらうようにしています。これは、就職後に自分で考えて治療を進められる理学療法士になることを見据えた指導です。

治療中も、私は学生のすぐ隣に立つのではなく、5〜7m程度離れた場所で声が聞こえる範囲にいるようにしています。

 

バイザーが近くにいると学生が緊張してしまうため、あえて距離を取ることも私なりの指導方法です。

もちろん、学生ですから治療がうまくいかないこともあります。その場合は患者さんに不利益が生じないように配慮し、必要に応じて私が治療を引き継ぎます。

 

たとえば、治療時間が60分であれば、前半30分を学生が担当し、後半30分を私が担当することもあります。

学生に経験を積んでもらうことは大切ですが、患者さんの安全と不利益の回避を最優先に考えなければなりません。

 

さいごに:臨床実習では学生のやる気を引き出すことが大切

理学療法士の臨床実習では、見学・評価・治療という段階に応じて、実習指導者も学生へのアプローチを変えています。

その時期に必要な課題や実技指導を提供し、学生が臨床現場への理解を深められるようにすることが大切です。

そして、私が実習指導で最も大切にしているのは、学生自身が考えることです。

 

学生が考えた内容が未熟だったとしても、最初から正解か不正解かを決めつける必要はありません。まずは、どのような理由でその結論に至ったのかを確認することが大切だと思います。

学生自身も、自分の考えが浅いことに気づいている場合があります。しかし、知識や経験が少ないため、それ以上の考えにたどり着けないこともあるでしょう。

そのため、学生の能力に合わせて指導内容を調整し、少しずつ理解できる範囲を広げていく必要があります。

 

私としては、一つの答えを教え込むよりも、新しい視点や別の考え方を提供することを意識しています。

たとえば、2×3=6という計算であれば、3×2でも2+2+2でも答えは同じになります。

一つの答えに対して、さまざまな考え方や導き方があることを伝え、多面的に物事を考えられるようになってほしいと思っています。

 

臨床現場では、患者さんの状態や生活背景に合わせて、自分で考え、判断する力が求められます。

学生には実習を通して少しずつ自分の考えを持てるようになり、将来は立派な理学療法士になってもらいたいものですね。

では。