各疾患には日本理学療法士協会が提唱する「理学療法ガイドライン」というものがあります。
過去の様々な研究や文献、論文から効果の有無や信頼性の高さを分類し、ガイドラインとして多くの理学療法士が作成しているもので、我々も臨床介入の参考にしています。
学生も、エビデンスのある介入をしていく必要があるので、ここでは分かりやすくエビデンスのあるもの(信頼性が高いとされているもの)をピックアップし、記載していきます。
教科書に載っていることも重要ですが、このガイドラインも重要ですのでぜひ臨床参加研修(臨床実習)の参考にしてください。
今回は脳卒中についてです。
死亡率第3位。意識障害、運動麻痺、感覚障害、言語障害や認知・記憶・遂行障害などの高次脳機能障害、嚥下障害などさまざまな症状がみられ、日常生活活動の制限や生活の質の低下に直結する
【参考書】
脳卒中のエビデンスのある理学療法評価
脳卒中に対する評価項目を紹介します。
臨床実習の参考にどうぞ!
脳卒中の総合的評価スケール
- 脳卒中機能障害評価セット(stroke impairment assessment set: SIAS)
- National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)
- フューゲル-マイヤー運動機能評価(Fugl-Meyer motor assessment)
- 国際生活機能分類(international classification of functioning disability and health: ICF)
- 脳卒中重症度スケール(Japan stroke scale: JSS)
脳卒中の運動機能評価
脳卒中の筋力評価
脳卒中の筋緊張・可動性の評価
脳卒中の歩行の評価
- エモリー機能的歩行能力評価(Emory functional ambulation profile: E-FAP)
- 歩行障害質問票(walking impairment questionnaire: WIQ)
- timed “up & go” test(TUG)
- 10 m 歩行テスト(ten-meter walking test)
脳卒中の姿勢・バランス評価
脳卒中の半側空間無視・注意障害・遂行機能障害の評価
- 時計描写テスト(clock drawing test)
- 線分二等分テスト(line bisection test)
- 文字抹消テスト(letter cancelletion test)
- 簡易認知機能検査(mini-mental state examination: MMSE)
脳卒中の疼痛・うつの評価
脳卒中のADL評価
脳卒中のエビデンスのある理学療法介入
脳卒中の理学療法介入(リハビリ)で有用性の認められているものをピックアップしていきます。
もちろん、ここに載っていない治療法も効果がある場合が多いですので、参考までにどうぞ。
脳卒中の早期理学療法
- 早期から運動を多く行うと早期離床につながる
- 能力改善は早期介入と関連するが、治療機関とは関連しない
- 早期介入群の入院期間は明らかに短くなる
脳卒中の姿勢と歩行に関する理学療法
- 早期歩行練習の実施
:機能的電気刺激を使用しての歩行
:床上歩行よりトレッドミル歩行が有用
:歩行治療にかける時間を長くすれば歩行改善が見込める - 回復期の姿勢・歩行練習
:部分免荷歩行の反復歩行
:運動イメージの構築
:自転車エルゴメーター - 装具療法
:AFOの使用で荷重量の増大が図れる
:アームスリングの使用
脳卒中の電気刺激療法およびその他の物理療法
- 中等度の上肢麻痺に対する経皮的電気 刺激(transcutaneous electrical nerve stimulation: TENS)
- 運動障害に対する機能的電気刺激(functional electrical stimulation: FES)で歩行改善を認める
脳卒中の持続的筋伸張運動
- 効果を認めない文献が多い
脳卒中の運動障害に対する理学療法
- バイオフィードバック療法
- 促通反復療法
- CI 療法(constraint-induced movement therapy)
- トレッドミル歩行練習
脳卒中の半側空間無視・注意障害・遂行機能障害に対する理学療法
- プリズム眼鏡の使用
- 認知リハビリテーション
脳卒中の肩関節障害に対する理学療法
- 温熱療法、寒冷療法の実施
- 慎重なハンドリング治療の実施
- 滑車運動は避ける
脳卒中の体力低下に対する理学療法
- 1日の歩数を増やしていく
- トレッドミル歩行
- 自転車エルゴメーター
脳卒中の在宅理学療法
- 介護者のメンタルケア
- 慢性期でも効果を認める
- 排泄行為が最も介護負担となっている
脳卒中のリハビリまとめ
脳卒中のアプローチといえばボバースアプローチですが、ここでは紹介していません。
学生には難易度が高すぎますからね。
いままで聞いたこともない評価項目も多く戸惑うかもしれませんが、こんなものもあるんだなと参考にして頂けると幸いです。
(もちろん、ぼくも知らなかったことも多いです…。)
脳卒中は身体機能の改善だけでなく、在宅復帰へのアプローチが必須となりますが、在宅復帰へ向けた文献や論文はものすごく少ないです(ボバース法や川平法などの文献はいっぱいある)
脳卒中後の生活にも着目し、介入を継続し、いつか皆さんが論文を書いていただけると理学療法の発展につながると思います!
【参考】
- 公益社団法人:日本理学療法士協会
- 一般社団法人:日本脳卒中学会
- 獨協医科大学
- リハ学
- Study channel
- 社会福祉法人大阪府障害者福祉事業団
- リハビリで使う評価表
- 理学療法とマイル
- 一般社団法人:日本脈管学会
- 理学療法士の残業ゼロ生活
- st-medica
- Wikipedia
- 公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンター
- 高田眼鏡店