『OKC』『CKC』
きちんと説明できる理学療法士は多くないかもしれません。
ということは、学生もよく分からず使っているのではないでしょうか。
と、考えられますが、それをどう臨床に生かせばいいか分からない方も多いと思います。
この記事では、臨床に役立つOKCとCKCについて解説していきますので、再度勉強する意味で流し読みして頂ければ幸いです。
OKCとCKCって何?
OKC:open kinetic chainとは
開放運動連鎖(OKC:open kinetic chain)
連動する関節のうち、遠位部の関節が自由に動くことができる場合の運動と定義されています。
OKCエクササイズは、簡単にいえばカラダの末端部分(足や手)が固定されていないものを指します。
たとえば、ベンチプレスやダンベルカール、レッグエクステンションなどはOKCです。
CKC:closed kinetic chainとは
閉鎖運動連鎖(CKC:closed kinetic chain)
連動する関節のうち、遠位部の自由な動きが外力によって制限(固定)されているような場合の運動と定義されています。
CKCエクササイズは、簡単に言えばカラダの末端部分が床などに接した状態で、固定されたものを指します。
たとえば、腕立て伏せやスクワットはCKCです。
semi-CKC:semi-closed kinetic chainとは
半閉鎖運動連鎖(semi-CKC:semi-closed kinetic chain)
自転車運動やスキー、スライドボードなどがこれに当てはまります。
手足が固定されているものはCKC、でも自転車は足が固定されているけど、ペダルが自由に動くからsemi-CKCだそう。
他にも、足の裏にタオルを敷いて滑らせたり、窓ふきなどはsemi-CKCになります。
▽スライドボード(セミCKC)▽
OKCの利点と欠点
【利点】
- 強化したい筋肉・関節を理解しやすい
- 荷重制限があっても実施できる
- 負荷量を調整しやすい
- 比較的安全に実施できる
【欠点】
- 動作に繋げにくい
- 位置・向き・方向など患者の理解が必要
- 負荷量の判断が難しい
CKCの利点と欠点
【利点】
- 筋のみでなく深部感覚にも促通できる
- 動作に繋げやすい(スクワット=立ち上がりなど)
- 認知症患者にも実施しやすい
【欠点】
- 代償運動や反動が出やすい
- 荷重制限があると実施できない
- 過荷重になりやすい
OKCとCKCのトレーニングの選択方法
OKCもCKCも、どちらも重要なトレーニングです。
では、どのように選択していけばいいのでしょうか。
発症時期に応じて選択する
疾患の発症時期に応じて選択する方法です。
急性期にいきなりCKCをすると、オーバーユースになってしまう恐れがあります。
受傷後または術後1週間くらいはOKCでの運動を行い、安全性を重視していきます。
受傷後2~4週になると、痛みも軽減してくるので徐々にCKCに移っていきます。
受傷5週以降は、自宅でのセルフエクササイズを検討し、OKCとCKCを自分で出来るように指導していきます。
疾患に応じて選択する
疾患によって、運動方法を選択する方法です。
例えば、大腿骨頸部骨折術後の患者で、明らかに一部の筋力低下が起こっている場合はOKCでその筋を徹底的に鍛えていくのが良いと思います。
逆に、脳梗塞片麻痺などでは、関節の深部感覚も賦活させていきたいので、CKCが選択するのも良いと思います。
もちろん、疾患の回復段階で変化させる必要もあります。
これは難しいので、指導者と一緒に検討することをおすすめします。
目的動作に応じて選択する
動作によって、運動方法を選択する方法です。
立ち上がりを安定させたい場合は、CKCのスクワットが取り入れられます。
歩行の遊脚相で、足底が擦ってしまう場合はOKCのニーアップが取り入れられます。
このように、動作から考え、必要な運動はどんな運動か考えて処方するのもアリです。
筋収縮も合わせて考える
OKCもCKCも、それだけでは運動としては不十分です。
そこにさらに筋収縮様式が入ってきます。
筋収縮にはそれぞれ特徴があり、5つに分類されていたのを思い出してください。
- 等尺性収縮(isometric contraction)
- 求心性収縮(concentric contraction)
- 遠心性収縮(eccentric contraction)
- 等張性収縮(isotonic contraction)
- 等速制収縮(isokinetic contraction)
このうち、 等張性収縮と等速制収縮はマシンがなければ実施できないので臨床現場では 等尺性・求心性・遠心性収縮を利用していきます。
当然、OKCやCKCでも、この収縮を考えながら処方しなければなりません。
例えば、椅子から立てるけど座るときにドスンと座ってしまう場合、CKCのスクワットが選択されます。
さらに、重視すべき点はお尻を持ち上げる時でなく、下げる時(遠心性収縮)であると分かります。
これを考えないと、単にOKCが良い、CKCが良いとは言えません。
筋収縮に関してはこちらの記事をご参照ください。
OKCとCKCの整形外科的適応
前十字靭帯損傷
CKCでの運動は、前十字靭帯損傷例に対して、有効性が確認されています。
CKCでの運動が、OKCでの運動と比較して脛骨の大腿骨に対する前方への剪断力を低下させることができるためです。
ある報告によると、OKCでの座位での膝関節の等尺性伸展および屈曲運動と,、CKCでの片側スクワット運動では、CKC運動の方が有意に脛骨の大腿骨に対する前方剪断力が少ないことが明らかにされてます。
またこの研究によると、OKCでの座位膝関節伸展運動は、膝関節屈曲 30°位で前方への剪断力が高くなり、屈曲角度が増すと前方への剪断力は小さくなることが明らかにされています。
つまり膝関節伸展域での大腿四頭筋の筋力強化運動を行う場合には、CKCでの運動が前十字靭帯にストレスをかけずに実施できると考えることができます。
ACL損傷術後のプロトコールでも、レッグエクステンションは推奨されず、ハーフスクワットが選択される場合が多いです。
このように筋力強化として、大腿四頭筋を鍛える目的があっても解剖学的・運動力学的にどんな影響が起こるのか考えながら選択していくことも重要であると思います。
ただ学生には少し難しいので、必ず指導者と相談して進めることをおすすめします。
まとめ:臨床でよく使うOKCとCKCってどっちがいいの?
OKC=非荷重下での運動 CKC=荷重下での運動
と、考えられますが、それを臨床に繋げていくには多くの事を考えていかないといけません。
疾患や動作、目的に応じて、必要な運動を処方できるようになってください。
基本的には
単関節・目的とする筋収縮がある=OKC
複合関節・目的とする動作がある=CKC
というように考えればわかりやすいかもしれませんね。
さらに、筋収縮や回数、負荷量の事も考えると、組み合わせは無限大です。
なんとなく実施するのでなく、しっかりとした考えを持って実施していきたいですね。
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