肩を回したり、膝を曲げ伸ばししたりするときに、関節がポキポキと鳴ると患者から相談されたことはありませんか?
関節から音が鳴ると、骨に異常があるのではないか、関節の隙間が狭くなっているのではないかと、不安に感じる人もいるでしょう。
では、なぜ関節はポキポキと鳴るのでしょうか。また、関節を鳴らすことによって、関節が太くなったり、将来的に痛みが出たりすることはあるのでしょうか。
実は、関節が鳴る原因は一つではなく、関節内の圧力変化によって生じる音や、腱などの組織が動くことで生じる音など、いくつかのメカニズムが考えられています。
この記事では、関節がポキポキ鳴る原因や、そのメカニズム、関節を鳴らしても問題ないのかについて、理学療法士の学生にもわかりやすく解説します。
関節がポキポキ鳴るのは悪いことではない

関節がポキポキ鳴ると、次のような不安を感じる人がいます。
- 骨に何らかの異常があるのではないか
- 関節の隙間が狭くなっているのではないか
- 将来的に関節の痛みが出るのではないか
- 関節を鳴らし続けると、指などの関節が太くなるのではないか
しかし、関節が鳴るという理由だけで、骨や関節に異常があるとは限りません。
例えば、痛みを伴わずに肩を回したときや、立ち上がるときに膝がポキポキ鳴る場合は、必ずしも治療が必要な状態ではありません。
一方で、関節の音に痛みや腫れ、動かしにくさなどが伴う場合は、関節や周囲の組織に問題が生じている可能性があります。
そのため、関節音の有無だけで判断するのではなく、痛みの有無や関節の動き、音が鳴る状況なども含めて考えることが大切です。
なぜ関節が鳴る?ポキポキ音が発生するメカニズム
関節が鳴る原因として知られているものの一つに、関節内の圧力変化によって気泡が形成される現象があります。
この現象を理解するために、まずは関節の中にある滑液について確認しておきましょう。
関節の中にある滑液とは?
関節の中には、滑液という粘り気のある液体が存在しています。
滑液は主に滑膜によって産生され、関節軟骨の表面を潤滑に保つとともに、関節軟骨への栄養供給にも関わっています。
また、滑液にはヒアルロン酸などが含まれており、水のように完全にサラサラしているわけではなく、ある程度の粘り気があることも特徴です。
私たちが関節を曲げ伸ばしするときには、関節面が滑らかに動く必要がありますが、滑液は関節面の摩擦を減らし、スムーズな運動を助けています。
このように、滑液は関節を正常に動かすために重要な役割を担っています。
関節内の圧力変化によって気泡が形成される
関節がポキポキ鳴るメカニズムとして、古くから研究されているのがキャビテーション理論です。
キャビテーションとは、液体の圧力が変化することによって、液体の中に空洞や気泡が形成される現象を指します。
例えば、指の関節を引っ張ったり、関節を急に動かしたりすると、関節内の圧力が変化します。その結果、滑液中に気体を含む空洞が形成され、関節音が発生すると考えられています。
ただし、関節音が鳴る仕組みについては、気泡がどのように形成され、どの段階で音が発生するのかという点で、研究による議論が続いています。
そのため、気泡が弾ける音だけで関節音のすべてを説明できるわけではありません。
関節がポキポキ鳴る原因の研究

関節音のメカニズムについては、1970年代から研究が行われてきました。
1971年には、イギリスのリーズ大学の研究チームが、関節内の気泡が関節音に関係しているという考え方を示しました。 【PDF】
関節を鳴らした後、再び同じ関節を鳴らせるようになるまでには、一定の時間が必要になることも知られています。
この現象は、指の関節を一度鳴らすと、すぐには同じように鳴らせないことからもイメージできるでしょう。
その後、2015年にはカナダのアルバータ大学の研究者らが、指の関節をMRIで観察し、関節音が発生する過程を調べました。 参考サイト
その研究では、関節音が鳴った後にも気泡に相当する空洞が関節内に残っていることが確認されました。
この結果を踏まえ、研究者らは、気泡が弾ける瞬間ではなく、気泡が形成されるときに音が発生する可能性を示しました。
この研究は、従来のキャビテーション理論について新たな視点を示すものとなりました。
ただし、関節音の発生メカニズムが完全に解明されたわけではなく、気泡の形成や変化が音にどのように関係するのかについて、引き続き研究が行われています。
関節音は気泡だけが原因ではない
肩や膝などの関節から鳴る音は、すべて同じ仕組みで発生するわけではありません。
例えば、腱や靱帯などの組織が骨の出っ張りを乗り越えるときや、関節周囲の組織が動くときにも、パキッ、コリッといった音が生じることがあります。
また、関節の表面や周囲の組織の状態によって、動作中に音が発生する場合もあります。
そのため、指の関節を鳴らしたときの音と、肩を回したときや膝を曲げ伸ばししたときの音を、すべて同じ原因だと考えるのは適切ではありません。
理学療法士を目指す学生は、関節音が聞こえたという情報だけで原因を決めつけず、どの動作で音が鳴るのか、痛みを伴うのか、関節の動きに制限があるのかといった点も確認することが大切です。
関節をポキポキ鳴らす際の注意すべき症状

痛みを伴わず、日常動作の中で自然に関節が鳴る場合は、一般的に大きな問題がないことも多く、音が鳴るという理由だけで過度に心配する必要はありません。
ただし、関節を強くひねったり、無理に引っ張ったりして、意図的に何度も音を鳴らそうとすることは避けましょう。
関節音が直接的に関節の変形や関節炎を引き起こすと、一律に断定できるわけではありませんが、無理な力を加えれば、関節や周囲の組織を傷める可能性があります。
また、関節音が鳴るときに次のような症状がある場合は注意が必要です。
- 音が鳴ると同時に痛みが出る
- 関節が腫れたり、熱を持ったりしている
- 関節が引っかかる感じがあり、スムーズに動かせない
- 関節の動く範囲が狭くなっている
- 関節が外れそうな感覚や、不安定な感じがある
- けがをした後から、関節音や痛みが続いている
このような症状がある場合は、単なる関節音ではなく、関節や腱、靱帯などの問題が関係している可能性もあります。
無理に関節を鳴らすことは避け、症状が続く場合や日常生活に支障がある場合は、整形外科などの医療機関に相談しましょう。
特に、強い痛みや急激な腫れ、関節が動かせないといった症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
さいごに:関節がポキポキ鳴っても、痛みがなければ過度に心配する必要はない
立ち上がるときや肩を動かしたときに、関節がポキポキ鳴ることがありますが、音が鳴るという理由だけで、運動不足や関節の異常があるとは限りません。
関節音には、関節内の圧力変化によって気泡が形成される現象や、腱などの組織が動くことによって生じる音など、さまざまな原因が考えられます。
また、関節音の発生メカニズムについては現在も研究が続いており、すべての関節音を一つの理論で説明できるわけではありません。
大切なのは、関節が鳴ること自体を過度に心配するのではなく、痛みや腫れ、動かしにくさなどの症状があるかどうかを確認することです。
関節音があっても痛みがなく、普段どおりに動かせるのであれば、過度に心配する必要はありません。一方で、痛みが出たり、関節が外れそうな違和感があったりする場合は、無理に動かしたり鳴らしたりせず、整形外科などの医療機関に相談しましょう。
関節音の仕組みを理解し、音だけで判断せず、症状や身体の状態を総合的に確認することが大切です。
参考文献
- Roston JB, Haines RW. Cracking in the metacarpophalangeal joint. The Journal of Anatomy. 1947.
- Kawchuk GN, et al. Real-Time Visualization of Joint Cavitation. PLOS ONE. 2015;10(4). https://doi.org/10.1371/journal.pone.0119470


