多くの実習先にある「エルゴメーター(エアロバイク」ですが、そのワット数(負荷量)の設定についてお伝えします。
理学療法士でも、そのワット数を適当に設定している場合が多いので、学生こそ的確に設定して実習指導者の度肝を抜いてやりましょう。
エルゴメーターとは?
エルゴメーターとは、内部疾患を有する患者の心肺機能の往生を目的に有酸素運動を行う器具のことです。
また、運動器疾患を持つ者の体力を強化する時に取り入れるものです。
エルゴメーターのメリット
- ペダルの重さで運動負荷を調整できる
- 毎回決まった負荷をかけることができる
- 整形外科的な疾患や肥満、内部疾患患者にも使用しやすい
- 転倒のリスクが少ない
- 天候に左右されない
エルゴメーターは歩くリハビリが難しい肩にとても有効です。
膝痛や肥満の方でも利用しやすく、安全にリハビリを提供できることが大きなメリットです。
エルゴメーターの運動負荷(ワット数)の決め方
1秒間に1J(ジュール) の仕事をするときの仕事率が1W(=1J/s)です。
1Jは物体に1ニュートン(N)の力を加え、1m移動させたときの仕事(1J=1N・m)
なんかよくわからないと思いますが、中学で習っている内容のハズ。
つまり運動負荷とワット数は関連性があります。
ヒトの運動負荷で良く用いられているのがメッツ(Mets)です。
メッツとは、安静時の酸素摂取量3.5ml/kg/分を1としたときに、その運動で何倍のエネルギーを消費できたかで運動強度を示した単位のこと。
メッツは「改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』」に細かく載っているのでご参照ください。
さて、このメッツを使ってワットに変換していきます。
一般社団法人日本ダイエットアカデミー協会では、このように記載されています。
この表を元に、以下のように細かく設定してみました。
たとえば、患者に「普通に歩く程度の運動強度を与えたい」と思ったら3メッツなので30Wの負荷量を与えればいいんです。
ただし、あまりにも体重が軽い・重い場合や、年齢が若い・高齢の場合は少しずつ調整する必要があります。
もちろん、心疾患などの重篤な内部疾患を持っている場合は、軽めのワット数から始めるのは言うまでもありません。
そして、いろいろな文献を読んできた結果、基本的には「目標運動負荷×10」のワット数を与えればいいんだと導き出しました。
走することで、安全で効率的な運動負荷を与えることが出来るんです。
参考にした文献等
- エアロバイク®(フィットネスバイク)の運動効果について (konamisportsclub.jp)
- 2011mets.pdf (nibiohn.go.jp)
- 運動強度とエネルギー消費量 | 健康長寿ネット (tyojyu.or.jp)
- 運動の項目とメッツ値 – カロミル (calomeal.com)
- _pdf (jst.go.jp)
- 身体活動のエクササイズ数表 | 健康づくり情報 | 公益財団法人 北海道健康づくり財団 (hokkaidohealth-net.or.jp)
まとめ
エルゴメーターの運動負荷(ワット)を出す際に、メッツを参考にするのは非常に理に適っています。
自宅でのADL状況を評価し、退院までに手に入れるべき能力が分かっていれば負荷量を決定することができるからです。
例えば
- 1人で歩けなければならない:3メッツ=30W
- 趣味が登山でまたやりたいと思っている:8メッツ=80W
- 1人で風呂に入りたい:6.5メッツ=65W
このように患者の求めていることに対して負荷量を設定することができます。
エルゴメーターの種類によっては、患者の性別・年齢を入れるだけで負荷量が決定されるものもあります。
便利ですが、理学療法士という専門性を持っているのであれば、「なぜその負荷量にしたのか?」を明確にできたほうがいいと思います。
なんとなく30Wで設定している理学療法士も多い中、エビデンスをもって負荷量を決定できると学生としての質の向上にもつながります。
ぜひ参考にしてください。