大腿骨の骨折で多い「転子部骨折」は、 主に2つの術式が選択されます。
- プレート固定
CHS固定法(CHS:Compression Hip Screw) - 髄内固定
ガンマネイル(PFN:Proximal Femoral Nail)
各手術方法によって、起こりやすい機能障害があります。
まず大腿骨転子部骨折の患者が来た場合、どちらの術式が選択されているのかを確認し、起こりやすい機能障害を予想することでリハビリプログラムを立てて行きましょう。
大腿骨転子部骨折の「CHS」と「ガンマネイル」の違い
上記画像の左がCHS、右がガンマネイルです。
CHSは転子部骨折や転子下骨折で選択される固定方法で、大腿骨骨頭にスクリュー(ネジ)を挿入し、大腿骨骨幹部にプレートを当てて固定します。
安定型の骨折(Evans分類でいう安定型)に使われることが多いです。
ガンマネイルも転子部骨折や転子下骨折で選択される固定方法で、大腿骨骨幹部の髄内(骨の中)にロッドを挿入し、スクリュー(ネジ)で固定します。
Evans分類でいう安定型だけでなく不安定型も適応します。
Evans分類
大きくは安定型、不安定型に分類され、
さらに骨折線の傾斜によってタイプ1.タイプ2に分かれます。
大腿骨転子部骨折の術式(CHS・ガンマネイル)で起こりやすい機能障害
CHSで起こりやすい機能障害
- 侵襲筋
大腿筋膜張筋
外側広筋 - 疼痛
軽度で術創部痛が主 - 可動域制限
股関節内転・膝関節屈曲 - 筋力低下
股関節外転
膝関節伸展
股関節周囲の疼痛性筋出力低下
四肢の廃用性筋力低下
CHSは大腿外側からの手術になるので、大腿筋膜張筋と外側広筋が侵襲されます。
その為、術創部の痛みと股関節の内転と膝関節の屈曲制限、股関節周囲筋の筋力低下が主な機能障害となります。
ガンマネイルで起こりやすい機能障害
- 侵襲筋
中殿筋・小殿筋
大腿筋膜張筋
外側広筋 - 疼痛
強度で骨由来が主 - 可動域制限
膝関節屈曲 - 筋力低下
股関節外転
股関節屈曲
膝関節伸展
股関節周囲の疼痛性筋出力低下
四肢の廃用性筋力低下
ガンマネイルは中殿筋・小殿筋が侵襲経路ですが、切開せずに剥離する方法なので強度な筋力低下や疼痛は起きにくいです。
術式としては安定しているので、どちらかというと骨折の痛みの方が強いです。
そのため、活動期間が減少し、廃用性筋力低下が起こりやすいと言えます。
まとめ
まず大腿骨転子部骨折の患者が来たら以下の手順を踏みます。
- レントゲンで術式を確認
- 痛みの強さを確認
- 筋力低下・可動域制限が起こりやすい部分にアプローチ
以上です。
痛みが強い場合は、抵抗をかけずに自重運動・補助運動・等尺性収縮運動を中心に行っていきます。
荷重量は医師に確認し、まずは平行棒内から実施していく事をお勧めします。
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