肩が痛いという患者の多くは肩関節周囲炎です。
肩関節周囲炎の病態を知り、評価と治療に役立てていきましょう。
リハビリにおける肩関節周囲炎の予備知識
肩関節周囲炎は、さまざまな原因によって生じそれらが混在し病態の理解が難しいケースが多いです。
だからこのような記事を書こうと思ったのですが、大まかな病態を理解していきましょう。
まず、肩関節周囲炎は、3つのサイクルによって成り立ちます。
- 炎症期(freezing phase)
- 拘縮期(frozen phase)
- 回復期(thawing phase)
炎症期(freezing phase)
炎症期は、疼痛の最も強い時期で夜間痛や安静時痛も認められます。
可動域制限はあるものの、疼痛による筋スパズムによる防御反応によるものが大きく、正確には関節拘縮とはいえません。
痛みに配慮しながら、肩周囲の筋肉や関節包の硬さを防いで行くことが目的となり、物理療法や肩甲骨の動きを広げる運動、ストレッチなどを徐々に行っていきます。
この炎症期は約2週間〜2ヶ月続くと言われています。
炎症期の治療プログラム
- ポジショニング
- 肩甲骨マッサージ
- 胸郭拡張運動
拘縮期(frozen phase)
拘縮期は、疼痛よりも可動域制限が著明となります。
肩甲上腕関節での動きはほとんど消失し、肩甲胸郭関節で代償され流のが特徴です。
疼痛は軽いけど残っています。
リハビリでは、積極的な運動療法をし、肩関節の動きを広げていきます。
個人の仕事やスポーツ特性を踏まえた動作練習やトレーニングを行うといいと思います。
この拘縮期は6ヵ月ほど続くと言われています。
拘縮期の治療プログラム
- コッドマン体操
- 体幹のストレッチ
- 肩甲骨外転運動(手を前方に伸ばす)
- 体の前で手を擦り合わせる運動
回復期(thawing phase)
回復期は、可動域・疼痛が徐々に改善していく時期です。
積極的な運動療法により、肩関節の動きの拡大を目指します。
肩周囲の筋力強化や腕を挙げるための土台となる肩甲骨を安定させるトレーニングなどを進めていきます。
この期間は拘縮期から徐々に移行し、完全に回復するまでに1年から1年半を要すようです。
回復期の治療プログラム
- チューブエクササイズ
- プーリー
- 腹筋運動
- 肩関節挙上運動
肩関節周囲炎の評価
疼痛評価
どのような痛みが、いつ出ているのかを確認します。
それにより識別が可能となります。
- 痛みの出る角度
- 痛みの出る時間
- 痛みの質
- 痛みの強さ
- 痛みの部位
逆に、痛みの消失するポジションや動きも確認できるといいですね。
関節可動域
一般的に関節可動域は他動運動で評価するが、肩関節の場合は日常動作と関連づけて評価する必要があるため、自動運動での可動域計測が基本となります。
可動域制限がある場合①関節拘縮、②筋力低下、③疼痛などの影響を受けていないか考察する必要があるので、他動運動でも見ておくと良いです。
特に回旋筋腱板の損傷の場合、損傷された筋の可動性が低下するので重要です。
筋力
肩関節周囲炎では、基本的に筋力低下は起こりません。
もし筋力低下があるとしたら、疼痛による逃避がメインです。
だから筋力低下がある場合は、肩関節周囲炎ではなく、回旋筋腱板の断裂や損傷が疑われます。
- drop arm sign(棘上筋)
上肢を90°外転させ上肢を離すと患者は挙上位を保持できずに下垂する現象。 - エンプティカンテスト(棘上筋)
上肢を回内させ、母子を床面に向け外転させる。 - 外旋筋力テスト(棘下筋)
外旋運動に抵抗を加える。 - リフトオフテスト(肩甲下筋)
手を腰に回し、離せるかテストする。
整形外科テスト
肩関節周囲炎は、さまざまな病態があります。
その病態を把握するために、整形外科テストを実施するのは不可欠です。
ペインフルアークサイン
下垂位から肩関節の外転運動を行なわせる。
その時、 60°~100°で疼痛が生じ、120°付近で疼痛が消失すれば陽性。
肩包下インピンジメントが疑われる。
Yergason’s test Speed’s test
上腕二頭筋長頭腱炎を疑う。
関節弛緩・関節不安定性
骨頭に、前方、後方、下方の3方向へストレスをかける。
骨頭の偏位を評価し、同時に脱臼感などの症状が誘発されるか否かを判断する。
日常生活による予防
肩関節周囲炎は、疼痛が軽減せず持続したり、再発を繰り返すことがあります。
よくリハビリには『ずっと良くなりません』という患者も来ますが、その多くは普段の生活や仕事の姿勢の取り方が影響していることが多いんです。
姿勢による予防
例えば、デスクワークなどで前屈みになり、円背姿勢をとりがちだったりすると、筋肉のバランスが崩れ、関節の負担が増え、肩関節の周囲組織に炎症を増悪します。
特に、首すじから背中にかけては硬くなりやすく、血管や神経も多いため障害となりやすいです。
慢性的な疼痛や再発予防のためには、普段の生活の中で姿勢を正すように意識したり、改善するための運動が必要です。
運動による予防
- 外旋 ストレッチ
肘を90度に曲げて手のひらで柱を掴みます。体を手のひら側に回旋させ、30秒間、肩関節を外旋方向にストレッチします。 - 前方屈曲ストレッチ
仰向けになり、痛いほうの腕を痛くないほうの手でつかみ、ゆっくりと持ち上げます。痛みのない程度まで挙上し、15秒間ストレッチします。 - 水平内転運動
痛いほうの腕を痛くないほうの手でつかみ胸のほうに引き寄せます。30秒間ストレッチします。
まとめ
肩関節周囲炎のリハビリは、病態の判断、病期を評価し、その状態に合ったリハビリを行なっていく必要があります。
経過も人によってさまざまなので、現状どのような症状があるのか確認し、患者自身にも説明しながら焦らせないことが重要です。
治らないからと言って無理に運動したり、治療を辞めてしまうことのないようにしましょう。
自宅でのIADLや、セルフエクササイズなども実施し、それがきちんとできているか、患者自身を管理することも重要です。