各疾患には日本理学療法士協会が提唱する「理学療法ガイドライン」というものがあります。
過去の様々な研究や文献、論文から効果の有無や信頼性の高さを分類し、ガイドラインとして多くの理学療法士が作成しているもので、我々も臨床介入の参考にしています。
学生も、エビデンスのある介入をしていく必要があるので、ここでは分かりやすくエビデンスのあるもの(信頼性が高いとされているもの)をピックアップし、記載していきます。
教科書に載っていることも重要ですが、このガイドラインも重要ですのでぜひ臨床参加研修(臨床実習)の参考にしてください。
今回は変形性膝関節症についてです。
変形性膝関節症は加齢、肥満、遺伝的因子、力学的負荷など多くの原 因が関与して発症する多因子疾患である
【参考書】
変形性膝関節症(OA:Osteoarthritis)のエビデンスのある理学療法評価
変形性関節症に有用な理学療法評価をピックアップします。
変形性膝関節症の患者情報
- 問診
- 既往歴
:ACL 損傷、再建術
:半月板損傷、部分切除と全切除 - 変形性膝関節症のリスク
:肥満、膝の外傷、仕事 - 肥満
:BMI
変形性膝関節症の画像検査
- 単純 X 線検査(Kellgren-Lawrence grading: K-L 分類)
- 磁気共鳴画像検査(magnetic resonance imaging: MRI)
変形性膝関節症の理学所見(客観的評価)
- 下肢アライメント
- 疼痛
- 膝関節周囲筋の筋力評価
- 股関節,足関節・足部周囲筋の筋力評価
- 胸郭・脊椎・骨盤との関係に関する評価
- 歩行評価
:歩行速度,ストライド,ケイデンス
:下肢関節の運動学的変化
:下肢関節の運動力学的変化
:外側スラスト
:筋活動 - 生活機能の評価
:FIM
:Barthel index - 健康プロファイル型尺度の評価
:MOS short-form 36(SF-36)
:Japanese knee osteoarthritis measure(JKOM) - 課題遂行テスト(performance test)
:timed up and go test
:6分間歩行テスト
変形性膝関節症(OA:Osteoarthritis)のエビデンスのある理学療法介入
変形性膝関節症のリハビリでエビデンスの高いものをピックアップしています。
もちろん、ここに載っていない治療法も効果がある場合が多いですので、参考までにどうぞ。
変形性膝関節症の保存的治療の理学療法介入
- 患者教育と生活指導
:運動を含む自己管理プログラム指導
:食事指導 - 減量療法
:BMI28以下を目標 - 運動療法
:筋力増強運動
:有酸素運動
:協調性運動 - 徒手療法
- 足底挿板療法
:変形の著しい症例に対して効果あり - 装具療法
:膝サポーターの使用 - テーピング
:疼痛に対するもの
:機能障害に対するもの - 物理療法
:超音波療法
:温泉療法
:TENS 療法(transcutaneous electrical nerve stimulation: TENS)
:水治療法(hydrotherapy)
:干渉波治療(interferential current therapy)
:レーザー治療
:物理療法の複合使用と運動療法との併用
変形性膝関節症の観血的治療後の理学療法介入
- 人工膝関節置換術(total knee arthroplasty: TKA)
:continue passive movement(CPM)装置(早期のみ)
: 関節可動域運動、スライダーボード運動(自動運動)
:漸増的筋力増強運動
:機能的運動療法、バランス運動
:術前の理学療法と患者教育 - 高位脛骨骨切り術( high tibial osteotomy: HTO )
:文献は見つからず
形性膝関節症(OA:Osteoarthritis)のリハビリまとめ
変形性膝関節症の患者はかなり多く、多くの人に発症していることを知ってください。
例えば、大腿骨頸部骨折患者でも変形性膝関節症を合併していることが多いので、膝の状態は必ず見るべきだと思います。
変形性膝関節症患者の90%が保存療法なので、発見が遅れると膝痛として表れます。
どんな時でも、変形性膝関節症の存在を頭に入れておいてくださいね。
文献的には、筋力強化や運動療法は効果あり!というものが多いですが、日本での研究はあまり多くないようです。
治療しつつ試行錯誤も必要な疾患であることは間違いないですね。
【参考】