臨床実習で重要になるのが「デイリーノート」です。
「デイリーノートの書き方はよくわからないんだよね」
「デイリーノートに何を書いたらいいか分からない」
そんな方も多いのではないでしょうか。
デイリーノートの書き方や活用方法が分からないと、何を書いたらいいか分からないし、どこまで書けばいいのかもわからないですよね。
しかも指導もなく、ほとんどが実習生や教育委現場に丸投げされるという事実。
デイリーノートはあくまで自己学習・指導者とのディスカッションをするためのツールなので、そんなに一生懸命やらなくても大丈夫なんです!
でもしっかりとデイリーノートを書けば、実習の経験値が天と地ほどの差が出てきます。
この記事では
- デイリーノートの基本的な活用方法
- デイリーノートの書き方
をお伝えしていきます。
【参考書】
臨床実習に関する情報がてんこ盛りの本です。
学生さんは1度読んでみることをおすすめします!
デイリーノートの活用方法!学校は学生に何をしてほしいの?
なぜデイリーノートを書かなければならないのでしょうか。
学校がデイリーノートを課題として課す目的は「1日の振り返りをしてほしい」「指導者とのディスカッションに活用してほしい」という願いが込められています。
今日の実習で
- 実際にやった事
- それに対する考え
- 調べたこと
- 次に繋げたい事
これを自分で振り返り、1日ごとに成長してほしいんです。
実習は指導者から学ぶだけでは成功しません。
自分で失敗を見極め、修正する能力を養ってほしい、そういう意味でデイリーノートを推奨しています。
そうすることで、指導者とのディスカッションの場が生まれ、よりよい実習になっていくんです。
デイリーノートで自分の考えを伝える
デイリーノートは、単に今日やったことを記録するだけではありません。
自分の考えや、今後に繋げていきたいことを書いていくべきです。
- 今日はこういうことを目標に実施した
- 実際にこういう結果になった
- その結果になった理由はこう思う
- だから次回はこうすれば良いと思う
この一連の流れ(SOAPやPDCAと言う)を記載し、自分の考えを記載します。
こうすることで、指導者はキミの考えを知ることができるし、それを踏まえてディスカッションすることができます。
デイリーノートは指導者が学生の考えを知り、援助または修正するために使うツールなんです。
臨床実習のデイリーノートの書きかた
デイリーノートにはどんな内容を書けばいいのか悩む方も多いのではないでしょうか。
実際にどんな内容を書くかは実習先や養成校によって異なりますが、基本的には以下の内容を書いてほしいと指導者は思っています。
【デイリーノートに書く項目】
- その日の目標
- 実際に行った事
- 行った結果、なぜそうなったか
- 次回どうするか
- 疑問に思ったこと/質問されたこと
- 実際に調べてきたこと
- 質問、感想、反省
これらが書かれているとディスカッションしやすいですし、学生が何を考えているかを把握しやすくなります。
特に翌日の行動目標は重要で「BBSを取りたい」「屋外歩行をしたい」と書かれていればそれに合ったオリエンテーションをすることが出来ます。
こうすることでコミュニケーションも生まれ、指導もしやすくなるし学生も実習がかなり楽になると感じることが出来ます。
自分から質問するより、デイリーノートに書いたほうが伝えやすいですからね。
間違えていけないのは、デイリーノートは「カルテではない」「レポートではない」ということ。
あくまで学生の為に実施するものであるので強制ではありません。
不要なら別にやらなくてもいいんですよ。
でもやるメリットの方が多いからやったほうが絶対に良いんですけどね。
デイリーノートの効率的に書く3つのポイント
デイリーノートの書き方で抑えておきたい3つのポイントは
- 実際に経験したことを書く
- それに対する自分の考えを書く
- 結論と行動目標を書く
これらを書くとデイリーノートとしての完成度が増します。
例えば大腿骨転子部骨折の患者に対し
- 股関節を外転させたら痛みが出た(経験)
- ROM-exで20度までは痛みが出ないから運動はここまでにしたほうがよさそう(自分なりの考え)
- 外転20度までの自動運動を実施したい(結論)
というような流れで書いていくといいでしょう。
デイリーノートをSOAPで書く方法
デイリーノートの書き方に決まりはなく、学生が書きやすい形式であれば、SOAPでも箇条書きでも絵を挿入してもかまいません。
もし養成校で書き方の指定があれば、それにならって書いていきましょう。
特に指示がなければ、SOAPで書くと書きやすいかもしれません。
- S(subjective):主観的情報
→ 対象者が話した内容などから得られた情報 - O(objective): 客観的情報
→ 診察や検査からなど得られた客観的な情報 - A(assessment): 評価
→ O と Sの内容を元に分析や解釈を行った総合的な評価 - P(plan): 計画(治療)
→ Aに基づいて決定した治療の方針・内容、生活指導など
【デイリーノートの原本:例】
この形式に「SOAP」で先ほどの骨折患者の内容を書き起こしてみましょう。
- 股関節を外転させたら痛みが出た(経験)
- ROM-exで20度までは痛みが出ないから運動はここまでにしたほうがよさそう(自分なりの考え)
- 外転20度までの自動運動を実施したい(結論)
上記の内容をデイリーノートにするとこのようになります。
【デイリーノートの記載:例】
形式は様々ですが、この順で記載していけば比較的わかりやすいデイリーノートに仕上がると思います。
デイリーノートはパソコンで書く場合があると思いますが、インターネットの情報や他人のアセスメントなど信頼性に欠けるものが多いのでコピーしないようにしましょう。
以前、丸ごとコピーしてきた学生がいて学校に連れ戻されていましたから・・・。
ただし、SOAPの欠点として「1人の患者に対して1つのSOAPが必要」という事。
場合によっては、5人の患者を見た場合5人分のSOAPが必要で、レポート用紙5枚必要になる場合も。
SOAPを使用する場合は、指導者と十分に使い方を検討したほうが良いですね。
デイリーノートをPDCAで書く方法
PDCAとは
- 「Plan(計画)」
- 「Do(実行)」
- 「Check(評価)」
- 「Action(改善)」
の各頭文字を取ったもので、「PDCAサイクル」とも言われます。
患者に対する「目標」を達成するために日々どのような計画を立てて実行していくかを考えていくもので、毎日の自分の振り返りに役立ちます。
ここでは、歩行障害のある患者に対して「目標:2週間後に杖自立」を掲げるPDCAを例に書いてみましょう。
計画(Plan)
実習の目標や成果達成までの計画を立てることを指します。
「目標:2週間後に杖自立」を達成するために、具体的に今日何をするのか計画を立てます。
数値目標を立てることがポイントで、期間の設定もあるとなお良いです。
- 杖歩行自立に向けて歩行評価を行う
- Mst以降の膝崩れに対して筋力強化エクササイズを行う
- 車輪付き歩行器で10m歩行を15秒以内にする
実行(Do)
計画を実行に移すことを指します。
計画を達成するために、どんな事をすればいいのか細かく洗い出します。
Planで設定した目標を達成するために必要な行動を洗い出し、行動していきます。
- 平行棒内歩行を評価し、問題なさそうなら実際に杖(4点杖T字杖)で歩いてもらう)
- 教科書を参考に「パテラセッティング」「スクワット」「ブリッジ」を行う
- 10m15秒以下にするために1step長を大きくする指導を行う
評価(Check)
行動が計画通りに実行できたかどうか、目標達成に至っているかどうかを評価します。
結果だけを追うのでなく、良かった点と反省すべき点を客観的な数値と共に洗い出し、「なぜそのような結果になったのか」を分析することが必要です。
もちろん上手くいった部分もきちんと洗い出し、次のサイクルに繋げていきます。
- 杖歩行はまだ難しそう、荷重量が増加しないのと、膝崩れの恐怖感が問題か
- 運動は出来ているが、実際に歩行すると恐怖感あり。もう少し強化必要であり、今後は患者自身がセルフでできるように促す
- 10m歩行は15秒であった。1stepは50cmから60cmに改善した。
改善(Action)
評価で分析した項目をベースに、継続すべき行動と改善すべき行動を検討します。
このままで良いのか、さらなる改善が必要か考え、具体的な改善方法を提案し、記載します。
ここで検討した改善法を次回に活かし、ブラッシュアップ(改善)していくんです。
- 杖歩行はしばらく中止し、筋力強化と平行棒内歩行を中心に実施していく
- セルフエクササイズのためにプリントを用意する、またCKCトレーニングも取り入れていく
- 1stepが65cmになれば10m10秒が見えてくるので、歩行を再評価する
PDCAサイクルを実施するには、最終的な目標を立てておく必要があります。
一連の分析・考察と行動を通して次のサイクルへとつなげることを意識すれば、臨床実習でも大いに役立つと思います。
デイリーノートを作成する時によくある質問7つ
デイリーノートを作成する時に学生さんからいくつか質問されることがあります。
ここでお答えしておきますので、ご参考にどうぞ。
【質問①】デイリーノートはどれくらいの量を書けばいい?
デイリーノートはA4用紙(または指定されたノート)1枚程度で十分です。
2枚も3枚も書く必要はありませんし、デイリーノートを書くだけで体力を消耗するのはもったいないです。
- その日の目標
- 実際に行った事
- 行った結果、なぜそうなったか
- 次回どうするか
- 疑問に思ったこと/質問されたこと
- 実際に調べてきたこと
- 質問、感想、反省
これらが2~3行づつ書かれていれば十分ではないでしょうか。
もちろん、日によってボリュームが変化すると思います。
対象患者を受け持った時は、3.実際に調べてきたことが10行くらいになることだってあります。
要は無理して長い文章を書かなくてもいいよ、ってことですね。
【質問②】デイリーノートはパソコンで作ってもいい?
デイリーノートはパソコンでも手書きでもどちらでも結構です。
ただし、シャーペンや鉛筆よりボールペンのほうがいいですね。
仕事を始めると公文書が多くなり、失敗できない(修正テープを使用できない)書類が数多く存在します。
学生のうちから「失敗できない状況」になれておくとイイですね。
ちなみに私は学校の授業も全てボールペンで書いていました。
消しゴムはテストの時しか使ったことがありません。
こうすることで、間違えずに書く練習にもなるし、ボールペンを使うクセも身に付けられます。
実際に仕事をすると、シャープペンシルは使ったことがありません。
ぼくはジェットストリーム をずーっと使っています。
【質問③】デイリーノートはいつ出せばいい?
デイリーノートは朝出してください。
朝出さないと、キミの行動目標を見ることが出来ません。
ただ朝は指導者も忙しいので話しかけにくいかもしれませんね。
そういう場合は、提出場所を聞いておきましょう。
指導者の机に、朝来たらポンとだせれば、朝から話しかけるタイミングを伺ってドキドキする必要はなくなります。
【質問④】デイリーノートを昼休み中に書いてもいい?
デイリーノートは昼休みに書いてもOKです。
ただノート自体は提出されていると思うので、別の紙に書いておくか、パソコンを持ち込めるならパソコンで作業してもいいと思います。
もちろん、指導者の許可を取ってくださいね。
【質問⑤】調べ物が多すぎてまとまらない時はどうすればいい?
調べ物が多すぎてまとまらない時は、デイリーノートにまとめずに要点だけ書いておくとイイです。
『パーキンソン病5徴候→病理学P245』のように、書いてある文献とページ数だけ載せてもいいと思います。
ある学生は文献をコピーして重要点にアンダーラインを引いてデイリーノートに挟んでいました。
使い方は自由なので、なるべく手間がかからないようにしましょう。
デイリーノートは指導者が評価するモノでなく、自分自身を高めるために使うものですからね。
【質問⑥】デイリーノートのおすすめの書き方は?
デイリーノートのおすすめの使い方は、評価と考察をデイリーノートで進めてしまう使い方です。
デイリーノートは「カルテではない」「レポートではない」と言いましたが、デイリーノートで評価結果と考察を毎日まとめてしまえばレジュメ作成の際はデイリーノートをコピペするだけで済みます。
こうして効率化を図っていくのはおすすめです。
【質問⑦】デイリーノートを作る際の注意点は?
デイリーノートを作る際の注意点は
- 誰の為に作っているのかを考える
- そこまで頑張らなくていい
- 最初から頑張りすぎない
- プリンターのインク切れに注意する
- 忘れたら「忘れました」と言う
この5つです。
デイリーノートでキミの評価が上下することはありません。
あくまで自己研磨とディスカッションの道具なので、頑張りすぎず、忘れたら嘘をつかず素直に「忘れました」で済む話ですから。
臨床実習での正しいデイリーノートの使い方
デイリーノートはコミュニケーションツールです。
学生の考えを書き、それを読んだ指導者がアドバイスをくれます。
ここで間違えていけないのは「自分の考えが間違っていた!」と感じ、指導者の考えに乗っかることや、自分を否定してしまう事。
あくまで指導者は自分の考えをのべただけなので、それが正しいかどうかははわかりません。
参考程度にしていきましょう。
場合によっては「エビデンス」が重要になるので、対象疾患に対する「日本理学療法士協会」が推薦するエビデンスレベルを確認してもいいかもしれませんね。
また、デイリーノートに疑問点や不明点を記載するのもいいです。
- ○○がわかりませんでした
- もういちど○○を教えてください
などと記載してください。
フィードバックの最後に「何か質問ありますか?」と聞かれてパッと質問できる学生は少ないはずです。
家に帰ってからきづく疑問もあるでしょう。
そういった場合、デイリーノートを活用してくれるといいですね。
デイリーノートの内容で実習の合否が決まることはまずありえません。
デイリーノートは自己学習のためにやると思って書いていくといいですよ。
臨床実習中のデイリーノートの取り扱いの注意点
デイリーノートはチェックリストと違って、個人情報が多く含まれています。
紛失には十分注意しなければなりませんし、簡単に中身がみえてしまっても困ります。
【こんな保管はNG】
- クリアファイルに挟んで提出
- バインダーに挟んで提出
- ファイルに挟んだが表面に学生の名前が無い
クリアファイルにデイリーノートを保管するのは中身が丸見えになってしまうので論外。
バインダーも2つ折りのものであればいいのですが、単にはさむだけのものでは安全性に欠けます。
このような折り畳み式のバインダーをご用意ください。
※画像は一例です。画像をクリックでたくさんの商品を見ることができます。
また、しっかりとファイルに挟んでも学校名や名前が記載してなければ意味がありません。
万が一落とした場合、誰が落としたのかわからず中を見られてしまいます。
ファイルの表と裏に大きく誰の物かを明記しておきましょう。
- 学校名
- 学科
- 名前
以上をしっかりと記載しておけば、万が一落としたときに安心です。
まとめ:チェックリストとデイリーノートを活用してよりよい臨床実習を!
チェックリストもデイリーノートも正しく使えばとてもよいツールになります。
ただし、使い方を間違えたり、面倒くさがって適当にしてしまうと意味の無いものになってしまいます。
その場合、提出しないほうがまだマシですね。
デイリーノートは学生の実習に対するやる気や姿勢がモロに出てくるので、適当に済まそうとする学生は一発でバレますし、学校の教員にも報告は行っていると思ってください。
「チェックリストのチェックを増やさなきゃ!」
「デイリーノートにいいこと書かなきゃ!」
と考えがちですが、そうではありません。
デイリーノートはレポートではないので、あなたの考えをしっかり書き記すことが重要になります。
それを見て、指導者はディスカッションに活用したり、あなたの考えを知ることができるのでデイリーノートの内容が正しいか間違っているかは二の次です。
しっかりと自分のスキルを客観的に把握したり、自分の考えを明確にするために活用していきましょう!
なにか指導者から言われても、それは「否定」ではありません。
臨床経験のある指導者からの「アドバイス」としてとらえ、どんどん成長していきましょう!