関節可動域訓練は理学療法の基本だそう。
臨床実習で指導者が、学生に出来ておいてほしい技術の中で、第一位に輝くほど基礎中の基礎。
実際に私も学生の頃全くできてなくて指導者にたくさん注意されました…。
ここでは、学生の頃の経験と今の指導者としての経験から、関節可動域訓練(ROM-ex)の基本をしっかりと学べるように順序だててお伝えしていきます。
- ROM-exの種類は?
- ROM-exの目的は?
- ROM-exの効果は?
この3つについて臨床に役立つレベルで解説していきます。
関節可動域訓練(ROM-ex)の種類と目的
関節可動域訓練の種類は主に3つです。
- 他動運動
- 自動運動
- 自動介助運動
これに抵抗運動を加える場合もありますが、抵抗運動は筋力強化やストレッチの部類に入るのでここで紹介しません。
抵抗運動についてはこちらの記事をどうぞ。

他動運動
他動運動は患者が一切の筋収縮をせず、セラピスト自身で関節を動かす方法です。
学生が最も使用する関節運動ですね。
他動運動を行うメリットは以下の3つです。
- 筋収縮が入らないので最大可動域を動かすことができる
- 純粋な関節の動きを知ることができる
- 関節構成体に対してアプローチができる
まず筋収縮が入らないので、関節の最大可動域まで動かすことが可能。
関節には「副運動」と呼ばれる関節の遊びがありますが、その部分までしっかりと動かすことができるので関節可動域幅の増大が期待できます。
そのため、関節自身の動きを把握しやすく、筋が邪魔をしないので関節構成体(関節包・靭帯・骨・軟骨)に問題がある患者に適したアプローチ方法と言えます。
例)変形性関節症、関節拘縮、関節炎、片麻痺、感覚障害など
自動運動
自動運動は患者自身が関節を動かしていく方法です。
自動運動を行うメリットは以下の3つです。
- 痛みの出ない範囲で動かすことができる
- リハビリ実施時間以外でもできる
- 筋力の維持・向上が図れる
自動運動は自分で動かすので、他動運動に比べると可動域は小さいです。
なので、関節可動域の向上というより、関節可動域の維持が目的として使われます。
自分で動かすので、痛みの出ない範囲で動かせるので心理的にも他動運動より安心して行えます。
また、自分で動かすのでセラピストの手を必要としないのでリハビリ実施時間以外にも自主練習として運動できますし、筋収縮も伴うので筋力強化としても活用できるので、亜急性期から回復期の患者に適したアプローチといえます。
例)大腿骨頸部骨折術後、靭帯損傷、こわばり、廃用症候群など
自動介助運動
自動介助運動は、患者自身に関節を動かしてもらい、セラピストが動きを誘導していく方法です。
自動介助運動を行うメリットは以下の3つです。
- 筋力が弱くても関節運動ができる
- 正しい関節運動を教えることができる
- 自動運動に比べて関節負担が少ない
自動介助運動は、自動運動を介助するわけですから筋力低下がある患者に対して効果を発揮します。
筋力低下があると代償動作を使ってしまうので、それを抑制するために介助したりします。
また、関節運動が上手くできない患者に正しい動きの方向を伝えたり、関節痛のある方に対して負担を軽減させるために介助したりもします。
自分である程度動かせるけど、自動運動では正しい運動ができない場合に導入されることが多いです。
例)片麻痺(ステージ3以降)、骨折術後、運動失調、協調性障害など
関節可動域訓練(ROM-ex)の効果
関節可動域訓練は、関節可動域を維持・向上する目的で行われますが、その効果はそれだけではありません。
【関節可動域訓練の効果】
- 関節の潤滑作用
- 筋の滑走作用
- 血流増進
- 神経系の興奮/抑制作用
- リラクゼーション作用
- 心理的作用
- 疼痛閾値の上昇
関節可動域訓練をすることで、様々な効果が報告されているので、ぜひ活用していきたい運動ですよね!
まとめ:関節可動域訓練は自動・他動・自動介助と分けて使う
学生で多いのは、関節可動域訓練というと他動運動しかやらない場合が多いです。
確かに他動運動が最も関節の動きを把握しやすく、患者への身体的負担は小さいのですが、本当に他動運動だけでいいのかを考えてみてください。
患者に合わせた関節可動域訓練を提供し、どうしたら目的の効果を得られるか?を考えながら実施していきましょう。
もし悩んだら指導者に「この患者には自動運動と他動運動どちらが効果がありそうですか?」と聞いてみるのもいいかもしれませんね。
