「とりあえず適当にキッキングとブリッジを10回行きましょうか!みんなやってるし!」
「大腿四頭筋の筋力強化は膝伸展運動だけでいいね、それ以外分からないし。」
そんなわけあるか
筋力強化エクササイズ(以下筋トレ)実施する時、どこまえ深く考えてやっていますか?
- なんとなく10回やってるし抵抗もなんとなく調整してる
- 指導者や周りのスタッフがやってるようにやってる
そんなやり方では意味がありません。
学生こそ筋トレの意味を知り、患者に合った運動を実施すべきです。
筋トレをすることで患者の身体機能はかなり改善します。
しかし間違ったやり方では全く効果のない代物になってしまいますので、今の内から筋トレの方法、考え方を学んでください。
【参考書】
筋力強化エクササイズ(筋トレ)の実施方法
筋トレの方法はいくつかあります。
- 自動運動(自動介助運動):低負荷で痛みのある時期でも調整しながら実施できる
- 徒手抵抗運動:セラピストが任意で負荷量を調整できる
- 重錘運動:1度設定すれば患者自身で運動できる
- セラバンド:引っ張る距離で負荷量が決まるため、自分で調整しやすい
どの方法を使用しても構いませんが、患者の性格や認知機能などを考慮し、その人に合った方法を提供しましょう。
筋トレの実施スタイルが良くわからなければ『徒手筋力検査法(MMT)』のやり方に準じてください。
MMTの姿勢や負荷のかけ方で行えば、指定された筋力強化が可能です。
しかも注意点や声のかけ方、代償動作も載ってますので、筋トレの方法に困ったらMMTをみることを強くおすすめします。
MMTのいい点は筋を個々に鍛えることができる点。
たとえば腕を鍛える筋トレもMMTを見れば識別できることがわかります。
上腕二頭筋、腕橈骨筋、上腕筋を別々に評価できましたよね?
あれを使えば、様々な筋肉を個別に鍛えることもできるというわけです。
筋トレをするときに考えたい『等尺性・求心性・遠心性収縮』
筋収縮にはそれぞれ特徴があり、5つに分類されていたのを思い出してください。
- 等尺性収縮(isometric contraction)
- 求心性収縮(concentric contraction)
- 遠心性収縮(eccentric contraction)
- 等張性収縮(isotonic contraction)
- 等速制収縮(isokinetic contraction)
このうち、 等張性収縮と等速制収縮はマシンがなければ実施できないので臨床現場では 等尺性・求心性・遠心性収縮を利用していきます。
こちらも患者に合わせた活用をしていきましょう。
それぞれの特徴を説明していきます。
等尺性収縮(isometric contraction)の特徴
【メリット】
- 関節を動かしてはいけない状況でも筋トレが可能
- 運動時痛があっても筋トレ可能
- 寝ていてもできる
- 酸素消費量が少なく、呼吸器疾患にも適応する
【デメリット】
- 血圧があがりやすい
- 疲労しやすい
- 過負荷になりやすい
- 運動を自覚することが難しい
等尺性収縮はギブス固定をされていても関節運動を伴わず運動できるのがメリットです。
関節炎などがあっても運動理解ができれば積極的に実施していくといいでしょう。
ただし、いきみ動作による血圧上昇(バルサルバ現象)に注意します。
関節運動が起こらないため高齢者や認知機能低下している方には修得しにくい運動です。
求心性収縮(concentric contraction)の特徴
【メリット】
- 関節運動がおこるので理解しやすい
- 過負荷になりにくい
- ADLにつなげやすい
【デメリット】
- 関節破壊のある場所には禁忌となる
- 痛みがあると実施できない
- 負荷量の調節が難しい
- スピードのコントロールが難しい
求心性収縮は筋の起始と停止が近づいていく運動です。
一般的に親しまれている運動なので、誰でも理解しやすいのが特徴。
ただし、負荷量の調整には気を使って評価しないと軽すぎたり強すぎたりしてしまいます。
また、関節などに痛みが出る場合があるので注意です。
遠心性収縮(eccentric contraction)の特徴
【メリット】
- より大きい負荷を与えることができる
- 筋力増強に適している
- スピードのコントロールがしやすい
【デメリット】
- 筋、関節への負担が大きい
- 骨粗しょう症患者には禁忌
- 運動が理解しにくい
遠心性収縮は筋の起始と停止が離れながら筋発揮していく運動です。
筋力強化、筋肥大させることに優れていて特にスポーツ関係の対象に実施することが多いメニューです。
しかし病院でも、ゆっくり座る運動などで取り入れているので、ぜひ活用していきたい運動ですね。
収縮方法による運動処方の例
どんな筋トレを実施していくか、様々なシチュエーションから考えてみましょう。
適切な筋力強化は、適切な筋収縮から生まれます。
- 座るときに「ドスン」と座ってしまう→大腿四頭筋の遠心性収縮
- 歩行時につま先が引っ掛かる→前脛骨筋の求心性収縮
- 料理や洗濯物干しなど、長時間立ってられない→抗重力筋の等尺性収縮
どんな動作ができないのかを予測し、収縮様式を選択します。
「ドスン」と座ってしまう人に、大腿四頭筋の求心性収縮をやってもいいのですが、恐らく遠心性収縮の練習をしたほうが効果が高いです。
筋トレの回数は何回?RM(Repetion Maximum)の法則
RM(Repetion Maximum)とは最大反復負荷のことです。
10RMであれば、10回ギリギリ上がるけど11回目は上がらないという負荷量。
病院で10RMという超負荷で運動することはまずありませんが、RMを参考にして負荷量を決めていくべきだと思います。
いつも同じ負荷量で10回運動してても仕方ありません。
- いつもと同じ負荷量で20回やってみる→15回目で筋出力が落ちてきた→15RMである
- これを繰り返して20回やっても筋出力が落ちなくなってきた→負荷量(抵抗)を上げよう
このように考えていくべきです。
ちなみに、RMは低いほど筋肥大に向き、多いほど筋持久力の向上に向きます。
筋トレしている筋にどのような特性をつけていきたいか考えれば、回数は10回では済まないはずです。
- 歩行継続距離を伸ばしたい(持久力が目的)→ブリッジ30回~50回
- 手を使わずに立てるようにしたい(筋力強化が目的)→ブリッジ、スクワット5回
このように変化するはずですが、キミは回数を目的によって変化させてますか?
【RMと効果】
- 1RM:筋肥大
- 5~12RM:筋力強化
- 30~60RM:筋持久力強化
なかやまきんに君でも知ってる話なので、医療学生の皆も知っておきましょうね。
学生におすすめの筋力強化エクササイズ
筋トレの方法はいくつか知っておいた方が良いです。
大殿筋を鍛えたくても、その方法がブリッジしか知らなかったらどうでしょう。
もし腰痛があり、ブリッジできない人にはどうやって運動させますか?
学生は筋トレの種類をできるだけ多く知っておくべきです。
腸腰筋の筋トレ
レッグレイズ
- 仰向けに寝ます。
- 膝を伸ばしたまま両足を上下させます。
ニーアップ
- 椅子に浅く座り背筋を伸ばす
- モモ上げを交互に行う
フロントランジ
- 床の上のに真っ直ぐに立つ
- 一歩前に足を踏み出す(なるべく大きく)膝角度は90度
- 二―レイズ
- 仰向けで足踏み
- 仰向けで空中に筋や文字を書く
- エアサイクル(空中で足漕ぎ)
大腿四頭筋の筋トレ
スクワット
- 足を肩幅に開く
- 椅子に座るイメージでお尻を下ろし、座が90度くらいになったら戻す
膝の角度が135度くらいで戻すのをハーフスクワットといい、臨床現場では多用される
legextension(レッグエクステンション)
- 椅子に座り、重錘をつける
- ゆっくり膝を伸ばしていく。つま先を上に向けると効果が上がる
パテラセッティング
- ひざ下に撒いたタオルを入れる
- タオルを膝裏で押しつぶす
- フロントブリッジ
- レッグレイズ
- フロントランジ
- シシースクワット(腰痛に注意)
ハムストリングス・大殿筋の筋トレ
ハムストリングスと大殿筋は同時に鍛えられることが多いです。
ブリッジ
- 膝を45度曲げた状態で背臥位になる
- お尻を持ち上げる
膝の角度によって負荷や効くポイントが変わります。
プランクレッグレイズ(バックキック)
- 四つ這いになる
- 足を水平に伸ばす
挙げた足と反対の手を伸ばすと背筋も鍛えられる
ヒップエクステンション
- うつ伏せになる
- 膝を曲げず、足を持ち上げる
挙げた足と反対の足を延ばせば背筋も鍛えられる
レッグカール
- うつ伏せになる
- 膝を曲げる
椅子に座った状態で膝を曲げても効果あり、ゴムチューブなどを使用する
- スクワット
- フロントランジ
- デッドリフト
- グッドモーニング(高齢者には不可)
中殿筋の筋トレ
ヒップアブダクション(サイドレイズ)
- 側臥位になる
- 上の足をまっすぐ持ち上げる
もちろん、座位・立位でも実施できます。その場合ゴムチューブなどを使用。
クラムシェル
- 側臥位になり膝を曲げる
- 膝を曲げたまま開く
サイドプランク
- 両足を伸ばし側臥位になる
- お尻を床から持ち上げる
その他の筋トレ(腹筋・大胸筋・背筋・上腕二頭筋)
【腹筋】
- ベント二―シットアップ
- アブドミナルクランチ
- レッグレイズ
- プランク
【大胸筋】
- プッシュアップ
- ダンベルプレス
- チェストプレス
【背筋】
- バックエクステンション
- ブリッジ
- ワンハンドローイング
- ラットプルダウン
【上腕二頭筋】
- アームカール
- プッシュアップ