学生が「何を書けばいいか分からない・・・」と、最も頭を悩ませる【FIM】ですが、なぜ書き方が分からないかと言うと「具体例」を知らないからだと思います。
ここでは、認知項目の具体例とともに、FIMの全ての項目を点数化させていきます。
もくじから必要な項目に飛んでください。
FIM認知項目の採点基準の基本
- 7点:完全自立
全く問題なく社会生活を営めている - 6点:修正自立
補助具の使用、違和感を感じるが問題なく社会生活を営めている - 5点:監視・準備
なんらかの手助けや準備をすれば社会生活を営める
- 4点:最少介助
相手が最小限の気遣いが必要 - 3点:中等度介助
相手が中等度の気遣いが必要 - 2点:最大介助
相手に重度の気遣いを要求する - 1点:全介助
社会生活の営みに問題がある
- 認知項目は複雑かつ曖昧なルールの中で点数化される
- 本人でなく、相手がどのような配慮をするかがカギとなる
- 場所・人・時間で変化する場合、より低いほうが点数となる
理解(Comprehension)
- 「何を」理解するのかを把握する
- 複雑な内容に対する理解ができれば7点、配慮が必要なら6点、理解できなければ5点以下となる
- 複雑な内容とは「数人での会話」「テレビや新聞の話題」「ジョーク」「金銭の話題」である
- 失語患者のジェスチャー、瞬きでのYes/No、首振りによる理解は単語レベルと考え2点となる
7点
- 全ての共通の話題について会話ができる
- 集団会話(ムンテラ)や退院計画に関する情報を理解できる
- 外国人だが、母国語であれば問題なく理解できる
6点
- 難聴があり、補聴器を使用する
- 難聴があるが「左から声掛けしてください」と言える
- 手話や点字を利用するが問題なく理解できる
5点
- 日常会話は理解できるが、微妙なユーモアを理解できない
- テレビを見たが、見た内容以上の深堀りができない
4点
- 簡単な会話は可能だが、テレビ番組のあらすじを追えない
- 簡単な文章であれば理解できる
- 補聴器があるが使用しない
- 文章の90%程度理解できる
- 相手が大きい声をだす、身振り手振りをするなどの配慮が必要
3点
- 空腹や口渇のを聞いても半分程度しか理解されない
- 「どこか痛いですか?」の短文が理解できず「腰、痛い?」の極短文が理解できる
2点
- 極短文が理解できず、腰を指さしながら「痛い?」でようやく理解できる
- 理解を得るためにかなりの配慮が必要(紙に書く、その場所に連れていくなど)
- ジェスチャーや首振りで理解を示す
1点
- 常に大きな声を出してお伝えしなければならない
- 何をしても全く理解できない
表出(Expression)
- 「何を」表出するのかを把握する
- 複雑な内容に対する表出ができれば7点、受け取り側の配慮が必要なら6点、複雑な内容の表出ができなければ5点以下となる
- 複雑な内容とは「数人での会話」「テレビや新聞の話題」「ジョーク」「金銭の話題」である
- 失語患者のジェスチャー、瞬きでのYes/No、首振りによる理解は単語レベルと考え2点となる
- コミュニケーションボードの使用は2点
7点
- 全ての共通の話題について友人と会話ができる
- 手話や文字で複雑な内容を表出できる
※手話は理解では6点、表出では7点になります。「理解」では相手が手話を使うという介助を行うため。「表出」はあくまで表出の方法のみである
6点
- 構音障害があるがストレスなく会話をすることができる
- 「あれ」「その」が多いが特に問題なく表出できている
5点
- 金銭的な事、保険の事について議論することが出来ない
- テレビ番組の内容について話すことが難しい
- 表出がうまく行かず、ストレスが溜まっているようだ
4点
- 「あの塩取ってください」というような短文で表出できる
- たまに間違った言い間違い「(食堂で)あの帽子(塩を指さし)を取ってください」などと言う
3点
- 伝えたい事の半分程度が間違っており、介助者は何が言いたいのか聞き返さなくてはならない
- 患者のいう事に聞き耳を立てたり、「〇〇ですか?」と確認が必要
2点
- ゆっくり話す、繰り返す、間を置く、強調するなどの工夫が必要
- 伝わらないと途中で話すのを辞めてジェスチャーをしだす
- 単語レベルで表出する
- コミュニケーションボードを使う
1点
- 表出する事柄が全てつじつまが合わない
- 全く表出ができない
- 理解不能な言葉を発している
社会的交流(Social interaction)
- 他人に迷惑を掛けずに適切に交流できるかを評価する
- どんな環境でも問題なく交流できるのであれば7点、わずかに迷惑をかける場合(精神安定剤の服用や極度の人見知りなど)は6点である
- 5点以下は「監視・指示」による反応を評価する
- 慣れていない場所で問題があれば5点、慣れている場面でも問題があるなら4点
- マンツーマンであれば問題なければ3点、マンツーマンでも問題があれば2点
- ベッド上や昼夜問わず問題があれば1点
- 監視、指示とは「モニター観察」「近位/遠位見守り」「言葉による抑制」「促し」
- 問題とは「拒否」「せん妄」「暴走」「かんしゃく」「不参加」「悪態」などを差す
7点
- スタッフに対し非常に強力的
- 個人行動が好きで1人でいることが多いが集団体操などでは問題なく参加できる
- 身体障碍があり、上手く発語ができないが「はい、いいえ」やジェスチャーなどで礼儀正しく対応しようとする努力が見られる
6点
- 行動コントロールの為に服薬をしている
- 極度の人見知りだが、時間がたてば問題なく振舞うことが出来る
- 好きな事に夢中で周りが見えなくなることがある
5点
- 言葉遣いなどの注意を受ける
- 訓練に非協力的だが参加する
- 口臭や体臭がキツく、迷惑だが接遇は保たれている
4点
- 交流を自分から始めず、促しが必要
- 慣れている療法士との訓練中にかんしゃくを起した
3点
- 促しても周囲との交流に参加しようとしない
- 集団体操の際、一緒に参加してあげる必要がある
- 1日の半分以上は適切に対応できるが、半分は部屋に引きこもっている
2点
- しばしば訓練を拒否し、暴言を吐く
- 迷惑行動により抑制されている
1点
- 日中は協力的だが、夜間せん妄が毎日あり同室者からクレームが出る
- 迷惑行動により拘束されている
問題解決(Problem solving)
- 「簡単な問題」と「複雑な問題」を評価する
- 問題解決できない理由は問わない(認知症、四肢欠損、性格など)
- 複雑な問題とは「収支の管理」「投薬の自己管理」「対人トラブルの処理」「退院計画」などである
- 簡単な問題とは「欲しいものを要求する」「作業の順番が分かる」「転倒する危険があるので人を呼ぶ」「ナースコールを使う」などである
7点
- 自分の金銭管理ができ、物事をその場で判断できる
- 四肢麻痺や四肢欠損だが、人に頼んで複雑な問題を解決できる
- 銀行で操作が分からず店員を呼ぶ
6点
- 金銭管理に時間がかかる
- 毎回お札で支払いを済ませる
- 道具の使い方が分からず、時間を要した
5点
- 日常生活は行えているが、金銭管理、退院計画などはできなかった
- 「家が家事になったらどうしますか?」の問いに答えられない
4点
- 転倒の危険があるのにナースコールを呼ばずに出歩くことがたまにある
- 日常の問題の90%は自分で解決している
3点
- ナースコールを半分程度呼べている
- 問題を認識できるが助けを呼べず、手助けを要する
2点
- 電話の掛け方が分からない
- 介助が必要なのに起き上がろうとする
1点
- 何をしていいか分からない
- ずっと横になっている
- 日常的な欲求がない(電気を消すなど)
記憶(Memory)
- 「対人記憶」「依頼記憶」「日課記憶」の3つを評価する
- メモなどの自助具が必要であれば6点
- 促しや助言が必要であれば5点以下となる
- 「対人」「依頼」「日課」の点数を平均した点数が記憶の点数となる
- 「対人」:良く知っている人の顔や名前を憶えている
- 「依頼」:頼まれたことを覚えている
- 「日課」:日常的な行動を覚えている
7点
- 毎日の日課をこなし、療法士に挨拶する
- 運動性失語で伝えることはできないが、時間通りに訓練室に来て療法士に会釈する
- たまに忘れるがすぐに思い出す
6点
- メモをし、見ることで日常生活に不自由していない
- 療法士の名札を見て確認する
5点
- たまにメモを見るように促される
- 予定表を作成すれば、その通りに行動できる
4点
- 作成した予定表を見ることを忘れ、促しの頻度が25%程度
3点
- 担当療法士の名前は憶えていないが顔は覚えている。
- 日課の種類は覚えているが、順番がバラバラである
- 依頼は覚えているが2件以上になると混乱する
2点
- 療法士は認識できたが、日課は表出できず依頼にもこたえられない
- 典型的な1日の流れを言えない
1点
- ほとんど記憶できていない
以上で認知項目のFIM検査は終了です。
全てを計算し、35点満点で計算してください。
FIMは
- 運動項目の合計点数(91点満点)
- 認知項目の合計点数(35点満点)
- 運動項目と認知項目の合計点数(126点満点)
の3種を導き出すのが基本です。