今回は、理学療法士が患者さんと接するときに大切な「態度と対応」についてお話しします。
態度とは、心の働きが表情や動作として外に表れたものであり、対応とは相手の状況や気持ちに応じた振る舞いのことです。
患者さんに対する態度や対応を間違えてしまうと、初対面の段階で悪い印象を与えたり、リハビリテーションを拒否されたりする可能性もあります。
よく「人間の第一印象は数秒で決まる」といわれますが、医療現場でも第一印象は非常に重要です。
考えてみると、少し怖いですよね。
理学療法士は、患者さんとの信頼関係を築きながらリハビリテーションを進めていく職業です。どれだけ専門的な知識や技術を持っていても、患者さんとの関係がうまく築けなければ、十分な治療効果につながらないこともあるでしょう。
学生や新人理学療法士のうちは、専門的な知識や技術を身につけることに意識が向きがちですが、患者さんへの接し方も同じくらい大切にしたいところです。
基本的な内容ではありますが、普段の行動を振り返ってみると、意外とできていないこともあるかもしれません。
ここでもう一度、自分の態度や対応を見直してみましょう。
コミュニケーション能力を高める4つの方法
患者さんと良好なコミュニケーションを取るためには、どのようなことを意識すればよいのでしょうか。
相手に不快感を与えず、安心して話してもらうためには、話す技術だけでなく、相手の話を聞く技術も必要になります。
ここでは、患者さんとのコミュニケーションを円滑にするための4つの方法を紹介します。
どれも基本的なことですが、日常の会話で意識して実践できているでしょうか。
1)うなずく
うなずくことは、相手に「しっかり話を聞いていますよ」と伝えるための大切な表現方法です。
ここで押さえておきたいのは、うなずくことは「話を聞いている」という意思表示であり、必ずしも「話の内容を理解している」という意味ではない点です。
患者さんとのコミュニケーションにおいて、まずは相手の話を聞く姿勢を示すことが大切になります。
ただし、うなずき方にも注意が必要です。
相手の話に対して、ハイハイと小刻みに何度もうなずいていると、適当に聞き流しているような印象を与えてしまうことがあります。
特に高齢の患者さんは、自分の話をじっくり聞いてほしいと感じている方も少なくありません。
相手の話す速度や内容に合わせて、ゆっくりとうなずくようにしましょう。
何気ない動作ですが、こうした反応が患者さんの安心感につながります。
2)あいづちをうつ
あいづちも、相手に「話を聞いていますよ」と伝えるためのコミュニケーション技術です。
患者さんの話に合わせて「はい」「そうなんですね」「それは大変でしたね」など、短い言葉を返してみましょう。
うなずきとの違いは、言葉に出して反応することです。
あいづちを入れることで、患者さんは自分の話に関心を持って聞いてもらえていると感じやすくなります。
ただし、毎回のように「そうですね」「はい」と繰り返していると、かえって不自然な会話になってしまうでしょう。
うなずきとあいづちを適度に組み合わせることがポイントです。
目安としては、うなずきを数回入れたところで、1回程度あいづちを返すくらいでも十分だと思います。
大切なのは回数ではなく、患者さんの話に合わせて自然に反応することですね。
3)目を合わせる
目を合わせることは、アイコンタクトと呼ばれるコミュニケーション技術です。
相手の目を見ながら話を聞くことで、「あなたの話をきちんと聞いています」という姿勢を伝えられます。
ただし、ずっと目を見つめ続けると、患者さんに威圧感や緊張感を与えてしまう可能性があります。
適度に視線を外しながら、自然なアイコンタクトを心がけましょう。
目を合わせることが苦手な方は、相手の目元や鼻、口元などに視線を向ける方法もあります。
また、医療職として患者さんと話すときには、できるだけ患者さんと同じ目線、あるいは少し低い位置から話しかけることも大切です。
立ったまま患者さんを見下ろすように話すと、無意識のうちに圧迫感を与えてしまうことがあります。
特に車椅子に座っている方やベッド上で過ごしている方と話すときには、こちらも椅子に座るなどして目線の高さを合わせてみましょう。
患者さんが安心して話せる環境をつくることも、理学療法士に必要な配慮のひとつです。
4)オウム返しをする
オウム返しとは、相手が話した言葉や内容を繰り返して返答するコミュニケーション技術です。
相手の話を聞いているだけでなく、内容を受け止めていることを伝えられるため、患者さんとの信頼関係を築くうえでも役立ちます。
たとえば、次のような会話です。
患者さん:「昨日は夜なかなか眠れなくてねぇ」
私:「眠れなかったんですか。何かあったのでしょうか?」
患者さん:「風の音がすごくて、窓がガタガタ揺れていたのよ」
私:「風の音がすごかったんですね。それで眠れなかったんですね」
このように、患者さんが話した内容を繰り返すことで、話を理解しようとしている姿勢が伝わります。
また、オウム返しには、患者さん自身が自分の気持ちや状況を整理するきっかけになるというメリットもあります。
特に、まだ信頼関係が十分に築けていない患者さんとの会話では、相手の言葉を丁寧に受け止めることが大切です。
ただし、相手の言葉を機械的に繰り返すだけでは、不自然な会話になってしまいます。
患者さんの表情や声のトーンにも注意しながら、気持ちに寄り添った返答を心がけましょう。
患者さんとのコミュニケーションを高める話し方のポイント
ここまでは、患者さんの話を聞くときのポイントを紹介しました。
次は、理学療法士が患者さんに話しかけるときの注意点について考えてみましょう。
話し方で意識したいのは、主に「声の高さ」「声の大きさ」「話す速度」の3つです。
まずは、患者さんの状態やその場の状況に合わせた声のトーンを心がけましょう。
たとえば、患者さんが痛みや不安について話しているときに、明るく大きな声で話しかけると、気持ちに寄り添えていない印象を与えてしまうかもしれません。
患者さんがどのような気持ちで話しているのかを考え、その場に合った話し方を選ぶことが大切ですね。
また、高齢の患者さんが何度も聞き返す場合には、こちらの話し方や周囲の環境に問題がないか確認してみましょう。
高齢になると、加齢に伴う聴力の変化によって、高い音域の音が聞き取りにくくなることがあります。
そのため、必要に応じて少し低めの落ち着いた声を意識し、ゆっくりとはっきり発音することが大切です。
聞こえにくいからといって、単純に大声を出せばよいわけではありません。
声を大きくしすぎると、かえって聞き取りにくくなったり、不快感を与えたりする場合もあります。
特に補聴器を使用している患者さんの場合は、音量によって聞こえ方が変わることもあるため、本人に確認しながら適切な声の大きさを調整しましょう。
また、話す速度も重要なポイントです。
高齢の患者さんに対しては、普段よりも丁寧に、ゆっくりと、はっきり話すことを意識してください。
早口で説明してしまうと、話の内容を十分に理解できないまま会話が進んでしまう可能性があります。
患者さんが理解できているかを確認しながら、必要に応じて言葉を言い換えることも大切です。
もちろん、話し方は年齢や性格、聴力、認知機能などによっても変わってきます。
高齢者だからといって一律にゆっくり話すのではなく、目の前の患者さんに合ったコミュニケーションを考えていきましょう。
患者さんとコミュニケーションを取るときに避けたい5つの態度
患者さんと話をするときには、言葉の内容だけでなく、自分の何気ない動作にも注意しなければなりません。
無意識に行っている動作が、患者さんに不快感や不信感を与えている可能性もあるからです。
ここでは、患者さんとコミュニケーションを取るうえで注意したい5つの態度を紹介します。
- 腕を組む
- 目を見ない
- 時計をチラチラ見る
- 筆記用具を鳴らす
- 自分の体を触る(髪・耳・口・鼻・爪など)
いかがでしょうか?
私自身も、2と4は無意識にやってしまうことがあります。
目を見ないことについては、もともと人と話すことが得意ではないため、つい視線を外してしまうのだと思います。
また、自分の顔を見られることに抵抗があるため、何らかのコンプレックスが影響しているのかもしれません。
4については、ボールペンをカチカチと鳴らしてしまう癖があります。
皆さんの周りにも、このような動作をしている人はいませんか?
こうした動作は、本人が気づかないうちに出てしまうことが少なくありません。
腕を組んでいると、相手の話を受け入れていないように見えることがありますし、時計を何度も確認していると、早く会話を終わらせたいという印象を与えてしまうでしょう。
筆記用具を鳴らしたり、髪や顔を頻繁に触ったりする動作も、相手の話に集中していないように受け取られる可能性があります。
大切なのは、自分の癖を自覚することです。
実習中に指導者から指摘されたり、友人との会話で気づいたりした場合には、少しずつ修正する努力をしていきましょう。
患者さんに安心してもらうためにも、言葉だけでなく、表情や姿勢、何気ない動作まで意識したいですね。
まとめ:理学療法士に必要なコミュニケーション能力を高めよう!
今回は、理学療法士に必要なコミュニケーション能力と、患者さんへの接し方について紹介しました。
患者さんと良好な関係を築くためには、単に会話をするだけでなく、相手の話を聞く姿勢や表情、声のトーンなど、さまざまな要素を意識する必要があります。
こうしたコミュニケーションを自然に実践できる人もいれば、意識して練習しなければ難しい人もいるでしょう。
人と話すことが得意かどうかは個人差がありますが、コミュニケーション能力は日々の経験や練習によって高めていけるものだと思います。
学生時代に接客業などのアルバイトを経験している方は、さまざまな年代や性格の人と接する機会があり、そこで身につけた経験が臨床現場で役立つこともあります。
理学療法士は、患者さんだけでなく、ご家族や医師、看護師、介護職、ケアマネジャーなど、多くの職種と関わる仕事です。
そのため、相手に合わせて必要な情報を伝えたり、話の内容を整理したりする能力も欠かせません。
最後に、仕事上の情報伝達にも役立つ5W1Hを紹介しておきます。
情報を整理するための5W1H
- Who(誰が): 私が
- When(いつ): 来週までに
- Where(誰に・どこへ): ケアマネジャーに
- What(何を): 家屋評価資料を
- Why(なぜ): 退院時の情報提供として
- How many(どのくらい): 2部用意する
このように、5W1Hを使うことで、伝えたい情報を整理しやすくなります。
特に、業務上の情報伝達では、何のために行うのかというWhyと、いつまでに行うのかというWhenが抜けてしまわないように注意しましょう。
なお、5W1Hは一般的にWho・When・Where・What・Why・Howで整理する方法です。上記の例では、Howの具体的な内容を「2部用意する」という数量で示しています。
患者さんとのコミュニケーションでも、職場での情報共有でも、相手に伝わるように話を組み立てることが大切です。
私自身も、まだまだ意識しなければできていないことがあります。
まずは、患者さんの話をしっかり聞くこと、相手の目線に合わせて話すこと、そして自分の態度を振り返ることから始めてみましょう。
毎日の小さな積み重ねが、患者さんとの信頼関係を築くことにつながるはずです。
皆さんも、ぜひ明日からの実習や臨床現場で意識してみてください。

