理学療法士の臨床実習では、見学や評価、治療の経験を積むだけでなく、その日に学んだことを振り返り、指導者からフィードバックを受ける時間も大切です。
フィードバックでは、見学した治療内容の補足説明やデイリーノートの修正、評価結果の解釈、今後の実習予定などについて、学生と指導者が話し合います。
自分では気づかなかった問題点を教えてもらえるため、知識や技術を身につけるうえで欠かせない機会と言えるでしょう。
ところが、臨床実習に参加している学生のなかには、十分なフィードバックを受けられず、何を学べばよいのか分からないまま実習を終えてしまう人もいるようです。
指導者に質問しても詳しい説明がなかったり、デイリーノートを提出しても簡単な確認だけで終わったりすると、不安を感じてしまいますよね。
では、なぜ臨床実習でフィードバックを受けられないのでしょうか。
その原因は、必ずしも学生だけにあるわけではありません。
指導者の業務状況や指導経験が関係している場合もあれば、学生の学習姿勢やコミュニケーションが影響していることもあります。
今回は、理学療法士の臨床実習でフィードバックが十分に受けられない原因と、学生・指導者それぞれが意識したい対処法について解説します。
指導者が原因でフィードバックをしない理由

理学療法士の臨床実習でフィードバックが十分に行われない場合、指導者側に原因があることも考えられます。
主な原因として、次の4つが挙げられます。
- 業務が忙しく、学生指導まで手が回らない
- 治療中に説明しているため、それで十分だと考えている
- 学生指導の経験が浅く、どのようにフィードバックすればよいか分からない
- フィードバックそのものを面倒に感じている
それぞれの原因について、詳しく見ていきましょう。
業務が忙しく、フィードバックまで手が回らない
理学療法士の仕事は、患者さんへのリハビリテーションだけではありません。
カルテの記載や書類作成、カンファレンスへの参加、他職種との情報共有など、さまざまな業務を並行して行う必要があります。
そのため、日々の業務に追われ、学生の指導やフィードバックに十分な時間を確保できない職場もあるでしょう。
しかし、臨床実習では学生が経験したことを振り返り、理解を深められるように支援することも重要です。
忙しいからという理由だけでフィードバックを省略してしまうと、学生は疑問を解消できず、学習の機会を失ってしまいます。
もちろん、患者さんの安全を確保することが最優先であり、緊急性の高い業務への対応が必要な場面もあります。
そのような場合は、フィードバックの時間を別に設けるなど、学生が学べる機会を確保する工夫が求められるでしょう。
指導者は、業務の進め方や時間の使い方を見直し、短時間でも必要な指導を行えるように工夫したいところです。
学生側も、フィードバックが十分に受けられない状態が続く場合は、学校の教員に相談してみましょう。
学生が安心して学べる環境を整えるためには、指導者個人の努力だけでなく、実習施設全体で指導体制を考えることも大切ですね。
治療中に説明しているため、それで十分だと考えている
患者さんへのリハビリテーションを行いながら、学生に治療内容や評価の目的を説明する方法は、効率的な指導方法の一つです。
患者さんの同意を得たうえで、実際の治療場面を見せながら説明すれば、教科書だけでは理解しにくい知識や技術を具体的に学べます。
関節可動域の評価や筋力検査、歩行練習など、実際の動作と結びつけて説明できることは、臨床実習ならではのメリットと言えるでしょう。
また、学生は指導者の手技や患者さんへの声かけを直接観察できるため、評価や治療をどのように進めているのかを理解しやすくなります。
ただし、治療中の説明だけですべての学習が完結するわけではありません。
学生は、説明を聞きながら疑問を感じていても、その場では質問できないことがあります。
患者さんの前では話しにくい内容もありますし、治療を見学している最中に疑問点を整理できない場合もあるでしょう。
たとえば、指導者が歩行練習を実施している場面を見学したとします。
学生は歩行練習の方法を理解できても、なぜその練習を選択したのか、どのような評価結果を根拠にしているのかまでは分からないかもしれません。
こうした疑問を解消するためには、治療中の説明に加えて、見学後に振り返りの時間を設けることが重要です。
指導者は、学生が理解できているかを確認しながら、必要に応じて補足説明を行いましょう。
学生も、疑問に感じたことをメモしておき、フィードバックの時間に質問できるよう準備しておくと、学習を深めやすくなります。
学生指導の経験が浅く、どのようにフィードバックすればよいか分からない
初めて臨床実習の指導を担当する理学療法士は、学生に何を教えればよいのか、どのような順番で説明すればよいのか分からず、戸惑うこともあるでしょう。
臨床経験が豊富な理学療法士であっても、学生に分かりやすく教えることが得意とは限りません。
自分では当たり前にできている評価や治療でも、学生が理解できるように言葉で説明するには、別の技術が必要だからです。
フィードバックでは、単に間違いを指摘するだけでなく、学生ができている点や改善すべき点を具体的に伝え、次に何をすればよいのかを明確にすることが大切です。
たとえば、学生が関節可動域測定を実施した場合、測定値だけを確認して終わるのではなく、測定方法が適切だったか、代償動作が生じていなかったか、測定結果をどのように解釈するのかまで振り返ると、理解が深まります。
指導経験が浅い場合は、先輩の理学療法士や上司に相談し、指導方法について助言を受けるとよいでしょう。
学生へのフィードバックを通じて、指導者自身も知識や技術を整理し、教育者として成長していくことができます。
経験が浅いことを理由に、学生へのフィードバックを放棄してよいわけではありません。指導者も周囲の協力を得ながら、学生の学習を支えていく姿勢が求められます。
学生側は、フィードバックがほとんど行われず、学習に支障が出ている場合には、学校の教員に状況を伝えて相談してみてください。
単にフィードバックを面倒に感じている
残念ながら、学生指導やフィードバックを面倒に感じ、必要な指導を十分に行わない指導者がいる可能性も否定できません。
フィードバックは、学生の理解度を確認し、今後の学習につなげるために必要な時間です。指導者にとっては手間がかかる場面もありますが、学生の成長を支えるうえで重要な役割を担っています。
学生の質問にまともに答えなかったり、デイリーノートを十分に確認せずに返却したりする状態が続くと、学生は何を改善すればよいのか分からなくなってしまいます。
学生が安心して学べるようにするためには、指導者自身が学生指導の意義を理解し、必要な支援を行うことが大切です。
もし指導者が学生指導に負担を感じているのであれば、上司に相談して指導体制を見直すことも必要でしょう。
学生側も、フィードバックが受けられず、学習に支障が生じている場合は、一人で抱え込まず学校の教員に相談してください。
学生が原因でフィードバックが少なくなる場合もある

臨床実習でフィードバックが十分に受けられない原因は、指導者側だけにあるとは限りません。
学生の態度やコミュニケーションの取り方によって、指導者が理解度や学習状況を把握しにくくなり、結果としてフィードバックが短くなってしまうこともあります。
もちろん、学生が緊張していたり、何を質問すればよいか分からなかったりする場合もあるため、質問が少ないことだけを理由に、やる気がないと判断するのは適切ではありません。
ここでは、学生側が意識したいポイントを紹介します。
実習に対する意欲が伝わらず、質問も少ない学生
指導者が治療内容や評価方法を説明しても、学生の反応が薄く、質問もほとんどない状態が続くと、指導者は学生が内容を理解できているのか、それとも興味を持っていないのか判断しにくくなります。
たとえば、説明を受けた際に返事がほとんどなかったり、理解できているかを尋ねられても曖昧な回答しかできなかったりすると、指導者はどこまで詳しく説明すべきか迷ってしまうでしょう。
学生は緊張しているだけかもしれませんし、頭の中で考えを整理している最中かもしれません。
しかし、その様子が指導者に伝わらなければ、学習への意欲が低いと誤解されてしまう可能性もあります。
そのため、学生は説明を受けたときに相づちを打ったり、自分なりに理解した内容を言葉にして確認したりするとよいでしょう。
たとえば、次のような伝え方が考えられます。
- 今日の評価では、関節可動域だけでなく、動作時の代償も確認することが大切だと理解しました。
- 今の治療を選択した理由について、もう少し詳しく教えていただけますか。
- 自分はこのように考えたのですが、評価の解釈は合っていますか。
このように、自分の考えを伝えながら質問すると、指導者も学生の理解度を把握しやすくなります。
また、フィードバックの最後に「何か質問はありますか」と聞かれたとき、特にありませんと答えてしまうと、そのまま話し合いが終了することもあります。
もちろん、本当に疑問がなければ無理に質問を作る必要はありません。ただ、分からないことがあるのに質問を遠慮しているのであれば、せっかくの学習機会を逃してしまうことになります。
臨床実習は、学校の授業とは異なり、決められた時間のなかですべての知識を一から教えてもらえるとは限りません。
学生自身も、見学や評価を通じて疑問を見つけ、必要な知識を調べながら理解を深めていく姿勢が求められます。
とはいえ、学生なのですから、分からないことがあって当然です。何が分からないのか自分でも整理できない場合は、まず疑問に感じた場面や理解できなかった説明を指導者に伝えてみましょう。
質問は、理学療法の評価や治療に関することだけでなく、臨床での考え方や患者さんとの接し方など、実習を通じて気になった内容でも構いません。
疑問を一つずつ解消していくことが、理学療法士としての成長につながります。
臨床実習では学生の意欲を引き出すことも指導者の役割
ここまで、学生の態度や質問の少なさがフィードバックに影響する可能性について説明しました。
ただし、学生が積極的に質問できないからといって、すべてを学生の責任にするのは適切ではありません。
学生が質問しやすい雰囲気をつくり、学習への意欲を引き出すことも、指導者に求められる役割の一つです。
学生のなかには、指導者が忙しそうにしていると質問を遠慮してしまう人や、質問したときに否定されるのではないかと不安を感じている人もいます。
また、指導者との相性やコミュニケーションの取り方によって、質問のしやすさが変わることもあるでしょう。
普段はあまり質問しない学生でも、安心して話せる環境では、自分の考えや疑問を積極的に伝えられる場合があります。
指導者は、学生の反応が薄いときに意欲がないと決めつけるのではなく、説明の内容が難しすぎないか、質問しにくい雰囲気になっていないかを振り返ることも大切です。
たとえば、指導者から「今日の見学で分かりにくかったところはありますか」と具体的に尋ねたり、学生が自分の考えを話してから助言を伝えたりすると、学生も疑問を口にしやすくなります。
学生側も、指導者が忙しそうだからと遠慮し続けるのではなく、質問したい内容をメモしておき、適切なタイミングで相談してみましょう。
臨床実習は、学生だけが努力すればよいものでも、指導者だけが頑張ればよいものでもありません。
双方がコミュニケーションを取りながら、学びやすい環境をつくっていくことが重要ですね。
まとめ:理学療法学生は臨床実習で多くのことを学ぼう

理学療法士の臨床実習では、見学や評価、治療の経験を積むだけでなく、指導者からフィードバックを受けて自分の理解を深めることが大切です。
しかし、フィードバックが十分に受けられない場合、その原因は一つとは限りません。
指導者が業務に追われていたり、学生指導の経験が浅かったりする場合もあれば、学生の反応や質問の少なさがコミュニケーションに影響している場合もあります。指導者と学生の双方が原因を考え、改善できる点を見つけていくことが重要です。
学生の皆さんは、実習中に分からないことがあれば、できるだけ疑問を整理して指導者に質問してみましょう。自分の考えを伝えながら質問することで、より具体的なフィードバックを受けやすくなります。
また、フィードバックがほとんど受けられず、学習に支障が出ている場合は、自分だけで解決しようとせず、学校の教員に相談することも忘れないでください。
臨床実習は大変なことも多いですが、患者さんへの接し方や評価の進め方、治療を選択する際の考え方など、学校の授業だけでは学びにくいことを経験できる貴重な機会です。
実習で学べることを一つずつ吸収し、知識と臨床経験を積み重ねていきましょう。指導者も、学生が安心して学び、成長できるように支援していきたいですね。

