手根管症候群は趣旨の痺れや異常感覚を主訴として整形外科でよく見ることができます。
実習でも外来リハをしているところは見ることがあるので、その識別方法とリハビリの評価・治療手順を紹介します。
手根管症候群の識別方法
手根管症候群は尺骨神経麻痺(損傷)との識別が重要です。
似たような症状が出るので、注意してください。
痺れの部位
手根管症候群の場合、痺れは中指を中心に出現します。
小指には痺れは発生しません。
尺骨神経麻痺は中指にも痺れが出ることがありますが、メインは小指です。
性別
手根管症候群は女性に圧倒的に多い(9:1くらい)です。
尺骨神経麻痺は、男性に多い(3:1くらい)です。
仕事
手根管症候群は、ピアノや料理、パソコンなど手首や指、握力を多く使う仕事に発生します。
尺骨神経麻痺は、大工や工事現場、野球やテニスなど、肘を多く使う仕事に発生します。
手根管症候群の評価
痺れの部位
手根管症候群はまず痺れを評価します。
痺れの度合い、頻度、痺れの増悪する姿勢などを確認します。
握力
握力の低下は末梢神経損傷でほぼ確実に出現します。
現在の握力を測っておくことで、回復度合いを見るのに役立ちます。
当然、健側も測っておくことで、もともと握力がどれくらいあったのか予想できます。
手指巧緻性
OKサイン、キツネ、アロハサインなど、指を動かせるか確認します。
やりにくいサインがあれば、それがどのような形を示しているか観察してください。
そうすると、障害されている筋がなんとなく分かります。
ADL
手が上手く使えないことで、どのようなADL障害が発生しているか聴取します。
主に料理・ボタンの着脱・PCのタイピングなどが挙げられ、生活や仕事に支障が出る場合もあります。
整形外科テスト
手根管症候群の場合、以下のテストを実施します
- チネルテスト
- ファーレンテスト
さらに尺骨神経麻痺との識別のためにFromentサインもやっておくと良いですね。
手根管症候群の治療
温熱療法
圧迫されている部位を温めることで、筋を柔らかくリラックスさせます。
そうすることで、神経圧迫が緩和され、痺れは良くなる場合もあります。
チネルテストである程度、障害部位を把握しておくとピンポイントで温めることができます。
マッサージ
前腕と手指の血液循環の向上、あるいは維持のために実施します。
もちろん、筋のリラックス効果により、腕から手指にかけての筋肉の緊張をやわらげ、手根管の内圧を下げることができます。
チネルテストである程度、障害部位を把握しておくとピンポイントでアプローチすることができます。
主に内側上顆から手根骨に向けてマッサージするといいですね。
ストレッチ
- 指伸筋
- 橈側主根伸筋
- 総指屈筋
などの手首周囲の筋をストレッチします。
筋力強化
握力を向上させるために行います。
ゴムボールを握ったり、水中でグーパーを繰り返すなど、軽い負荷の物を頻回行います。
また、リズミカルに握る・離すを繰り返すことで筋収縮の再教育を図ります。
巧緻性練習
ペグボードや、細もの(鉛筆やつまようじなど)を使い、指の腹でつまむ練習をします。
日常生活(洗濯、料理、食事)において必要となる動作です。
親指と人差し指のみでなく、親指と中指・親指と薬指・親指と小指と、全ての指で行うようにします。
エルゴノミクス指導
エルゴノミクスとは、「より正しい姿勢に導く」指導のこと。
正しい姿勢とは、ただ楽な姿勢というわけではなく、身体を使うために必要な骨と筋肉を、適切に使用するための動作指導の事です。
適切な姿勢に導いたり、クッションを入れて調整した、作業台の高さを調整するのもエルゴノミクス指導です。
ここで間違ってはいけないのは、「より安楽な姿勢」ではなく「効率的な姿勢」であることです。
サポーターの使用
手関節のサポーターを使用することで、手関節を安定させることができます。
特に手根管症候群の場合、屈筋群の脱力があるので、手関節を安定させることで効果が出ます。
こんな感じのでも十分です。
炎症の管理
手根管症候群には、炎症が発生します。
炎症の管理をすることで痛みや腫れを軽減し、リハビリを効果的に進めることができます。
湿布薬の使用や、寝る前のアイシングなどをお伝えすると良いと思います。
病状理解(エデュケーション)
手根管症候群の病状や症状を患者本人に理解させることで、症状の再発予防につながります。
しっかりと病態をお伝えし、適切な生活を送って頂けるように配慮しましょう。
まとめ
手根管症候群のリハビリには以下のポイントがあります。
- 手首の動きを改善するために、手首の屈曲・伸展、尺骨側・橈骨側の動きを含む範囲運動を行う。
- 手指の動きを改善するために、指の屈曲・伸展や掌屈・背屈の運動を行う。
- 神経の滑りを促進するために、神経グライディングのエクササイズを行う。
- 手首や手指の筋力を強化するために、ゴムバンドや手動抵抗を使った筋力トレーニングを行う。
- 日常生活動作の再訓練や作業環境の改善も重要である。
ただし、リハビリの進行は個々の症状や病状に合わせて調整されるべきです。
その患者の病態に合わせて、運動療法を選択しましょう。
また、早期のリハビリが効果的なので、評価に時間を取られすぎないようにしましょうね。