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理学療法士が行う歩行練習とは?患者さんの歩行能力に応じた練習方法と評価のポイント

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理学療法士が行うリハビリテーションの中でも、重要な運動のひとつが歩行練習です。

歩行練習には、患者さんの歩行動作を観察して問題点を評価することや、繰り返し歩くことでより安定した歩行動作を獲得すること、さらに歩行距離を延ばして持久力を向上させることなど、さまざまな目的があります。

 

病院で働く理学療法士であれば、日常的に歩行練習を実施する機会があると思いますが、ただ患者さんを歩かせるだけでは十分なリハビリテーションとはいえません。

患者さんの身体機能や歩行能力、退院後の生活を考慮しながら、何を目的として歩行練習を行うのかを明確にする必要があります。

今回は、歩行練習の対象となる患者さんを歩行能力に応じて3つに分類し、それぞれの練習方法や理学療法士が意識したいポイントについて解説します。

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歩行練習を実施する対象者

歩行練習の方法は、患者さんの歩行能力によって大きく異なります。

病院で歩行練習を行う患者さんは、基本的に次の3つのタイプに分けて考えることができます。

  • まったく歩けない、または日常生活で歩行を行っていない患者さん
  • 歩行は可能だが、介助や見守りが必要な患者さん
  • 一人で歩くことができる患者さん

それぞれの患者さんでは、必要な介助量や使用する歩行補助具、練習する場所、目標とする歩行能力が異なります。

 

例えば、立位を保持することが難しい患者さんと、杖を使用すれば一人で歩ける患者さんでは、同じ歩行練習でも実施すべき内容は大きく変わります。

そのため、歩行練習を始める前に患者さんの身体機能や歩行能力を評価し、現在の状態と今後の目標に合わせて練習方法を選択することが大切です。

 

まったく歩けない患者さんに対する歩行練習

ここでいう、まったく歩けない患者さんとは、普段は車いすやベッド上で過ごしており、日常生活で歩行を行っていない方を指します。

ただし、日常生活で歩いていないからといって、必ずしも歩行能力が失われているわけではありません。

リハビリテーションの場面では介助によって歩けるものの、転倒の危険性などから病棟では歩いていない患者さんも含まれます。

 

一方で、立位保持や下肢の振り出しが難しく、歩行練習そのものに大きな介助を必要とする患者さんもいます。

このような患者さんに歩行練習を行う場合は、練習する場所と使用する道具を適切に選択し、安全に歩行経験を積める環境を整えることが重要です。

 

練習場所を決めよう

歩行練習を実施する際には、患者さんの身体機能や介助量に合わせて練習場所を選択する必要があります。

例えば、上肢で体重を支えることができ、立位保持もある程度可能で、今後は歩行器や手すりを使用した歩行を目指している患者さんであれば、平行棒内で歩行練習を始める方法が考えられます。

平行棒は支持物を両手でつかめるため、立位の保持や重心移動、下肢の振り出しなど、歩行に必要な動作を段階的に練習しやすい環境です。

 

一方で、転倒や膝折れのリスクが高い患者さんでは、平行棒内だけでは十分な練習が難しい場合もあります。

膝折れとは、立位や歩行中に膝関節が急に曲がり、体重を支えられなくなる現象です。

そのような場合には、患者さんの身体状況に応じて複数の理学療法士が介助し、広いスペースで歩行練習を実施することもあります。

ただし、介助者の人数を増やせば必ず安全になるわけではないため、転倒リスクや必要な介助方法を事前に検討しておくことが大切です。

 

歩行練習の場所は、単に歩きやすい場所を選ぶのではなく、患者さんの能力を引き出しながら安全に練習できる環境を選択しましょう。

 

歩行練習に使用する道具を選択しよう

歩行能力が低い患者さんでは、理学療法士による介助に加えて、平行棒や歩行器、歩行車、歩行補助ロボットなどを使用することがあります。

 

このときに重要なのが、介助のしやすさと今後の歩行能力の見通しです。

介助のしやすさとは、患者さんの身体機能や歩行能力を踏まえたうえで、理学療法士が安全かつ効率的に歩行練習を行えるかという視点です。

 

例えば、歩行中に膝折れが生じる患者さんに対して、歩行車を使用しながら後方から介助する方法では、患者さんの身体を支えつつ歩行車の動きにも注意しなければならず、介助が難しくなることがあります。

その場合は、歩行器を使用して一歩ずつ足を前に出してもらい、理学療法士が近くで見守りながら、必要に応じて膝折れを防ぐ介助を行う方法も考えられます。

 

ただし、どの道具が適しているかは患者さんによって異なるため、上肢の支持能力やバランス能力、下肢筋力、理解力などを評価して判断する必要があります。

また、歩行練習では、現在の介助量だけでなく、今後どのような歩行能力を獲得してほしいのかを考えることも重要です。

 

退院後に歩行器を使用して生活することを目指すのか、杖歩行を目指すのか、それとも補助具を使用せずに歩けることを目標とするのかによって、必要な練習内容は変わります。

患者さんの現在の能力だけを見るのではなく、今後の生活を見据えて、目的に合った歩行練習を実施しましょう。

 

歩くのに介助が必要な患者さんに対する歩行練習

歩行に介助が必要な患者さんには、歩行器や杖を使用すれば歩けるものの、身体を支える介助や近くでの見守りが必要な方などが含まれます。

このような患者さんは、歩行そのものは可能であっても、転倒の危険性やバランス能力の低下など、何らかの問題を抱えている場合があります。

 

例えば、歩行中にふらつきが生じる患者さんや、認知機能の低下によって目的地を理解することが難しい患者さん、指示された歩行補助具を適切に使用できない患者さんなどが挙げられます。

また、周囲の人や物に注意を向けることが難しく、安全な移動に支障が出る場合もあります。

 

このように、患者さんが介助を必要とする理由はさまざまであり、単純に筋力が弱いからとは限りません。身体機能だけでなく、認知機能や注意機能、歩行環境なども含めて評価することが大切です。

 

介助が必要な患者さんの歩行練習の進め方

歩行に介助が必要であっても、一定の歩行能力が保たれている患者さんでは、現在の能力を把握しながら、少しずつ自立度を高めることを目指します。

まずは、患者さんが普段どのような歩行補助具を使用しているのか、どの程度の介助を受けているのか、どのくらいの距離を歩けるのかを確認しましょう。

 

例えば、病棟では歩行器を使用して介助を受けている患者さんでも、リハビリテーションでは杖歩行が可能な場合があります。

一方で、歩行練習では歩けても、疲労が蓄積するとふらつきが強くなり、介助量が増える患者さんもいます。

そのため、普段の歩行状況だけで判断するのではなく、実際の歩行場面を観察し、どの動作で問題が生じるのかを評価することが重要です。

 

そのうえで、現在の歩行能力よりも少し難しい課題を設定し、安全性を確保しながら段階的に練習を進めていきます。

 

普段の生活よりも少し難しい歩行練習を行おう

介助が必要な患者さんでは、日常生活における移動能力が十分に回復していない可能性があります。

そのため、現在の歩行能力を維持するだけでなく、介助量を減らし、自立した移動を目指すことも重要な目標になります。

 

例えば、歩行器を使用して介助を受けている患者さんであれば、身体機能やバランス能力を評価したうえで、より支持性の低い歩行補助具を使用する練習を検討できます。

また、杖を使用して介助を受けている患者さんであれば、手すりなどの支持物を活用しながら、介助量を減らした歩行練習を行う方法も考えられます。

 

ただし、必ずしも歩行器から杖へ、杖から独歩へと進めればよいわけではありません。

歩行補助具を変更すると転倒リスクが高まることもあるため、患者さんの身体機能や認知機能、歩行の安定性を確認しながら慎重に進める必要があります。

 

また、リハビリテーションでは、日常生活で行っている動作を繰り返すだけでなく、患者さんの能力に応じて適切な負荷を与えることが大切です。

筋力トレーニングでも、現在の筋力に応じた負荷を設定することで、筋力の向上を目指します。同様に、歩行練習でも、現在の能力に合った課題を設定し、少しずつ難易度を高めることが歩行能力の向上につながります。

 

ただし、負荷を高めすぎると転倒や過度な疲労につながるため、安全性と運動の効果を両立できる課題を設定しましょう。

 

普段より長い距離や速い速度で歩こう

患者さんが安全に歩行できるようになってきたら、歩行距離を延ばしたり、歩行速度を高めたりする練習も検討しましょう。

短い距離であれば安定して歩ける患者さんでも、長い距離を歩くと疲労によって姿勢が崩れたり、足の振り出しが不十分になったりする場合があります。

そのため、歩行距離を延ばすことは、歩行の持久力や疲労による動作の変化を確認するうえでも重要です。

 

また、歩行速度を高める練習では、単に速く歩けるようにするだけでなく、速度を上げたときにもバランスを保てるか、歩幅や歩行リズムが乱れないかなどを観察する必要があります。

ただし、長い距離を歩ける患者さんや歩行速度が速い患者さんほど、必ずバランス能力が高いとは限りません。

歩行距離や速度は、バランス能力だけでなく、筋力や持久力、疼痛、認知機能などの影響も受けるため、それぞれの要素を分けて評価することが大切です。

 

歩行能力を評価する方法としては、連続して歩ける距離の確認や6分間歩行テストなどがあります。

6分間歩行テストは、決められた条件のもとで6分間歩行し、その距離から歩行持久力を評価する方法です。

さらに、ケイデンスを算出することで、1分間あたりの歩数を確認できます。

歩行距離や歩行速度、ケイデンスなどを組み合わせて評価すると、患者さんの歩行能力をより具体的に把握しやすくなります。

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一人で歩ける患者さんに対する歩行練習

一人で歩ける患者さんであっても、歩行能力に問題がないとは限りません。

例えば、平地を歩くことはできても、方向転換でふらつく患者さんや、人混みの中では周囲への注意が不十分になる患者さん、段差や階段で転倒の危険性が高くなる患者さんなどがいます。

そのため、一人で歩ける患者さんに対しても、歩行速度やバランス能力だけでなく、周囲の環境に対応する能力や、日常生活で必要となる応用的な歩行動作を評価することが大切です。

 

歩行が自立している患者さんでは、基本的な歩行動作を繰り返すだけでなく、実際の生活場面を想定した練習を取り入れることで、より実用的な移動能力の獲得を目指します。

 

ダブルタスクで歩行しよう

 

私たちは日常生活の中で、ただ歩くだけでなく、さまざまなことを同時に行っています。

例えば、人と話しながら歩いたり、目的のお店を探しながら移動したりすることは珍しくありません。

また、周囲の物音や人の動き、信号の色、路面の段差などにも注意を向けながら歩いています。

このように、歩行と別の課題を同時に行うことを、ダブルタスク(二重課題)といいます。

 

ダブルタスクでは、歩行動作に加えて認知的な課題や別の運動課題を行うため、歩行だけに集中している場合とは異なる能力が求められます。

特に、注意機能や認知機能が低下している患者さんでは、別の課題に意識を向けることで歩行速度が低下したり、ふらつきが増えたりすることがあります。

具体的な練習方法としては、しりとりをしながら歩く、歩きながら指定された物を探す、歩行中に簡単な計算を行うなどが考えられます。

 

こうした練習を取り入れることで、歩行中に別のことへ注意を向けた際に、歩行がどのように変化するのかを確認できます。

また、患者さんの能力に合わせて課題の難易度を調整すれば、日常生活で必要となる注意配分の練習にもつながります。

ただし、ダブルタスクを行うと転倒リスクが高まる可能性もあるため、患者さんの歩行能力や認知機能を評価し、安全に実施できる環境を整えることが必要です。

 

歩行以外の応用動作も取り入れよう

一人で安定して歩ける患者さんでは、歩行能力をさらに高めるために、速歩や方向転換、後ろ歩き、段差の昇降など、応用的な動作を取り入れることも考えられます。

患者さんの身体機能や目標によっては、ジョギングや走行、ジャンプなどの練習が必要になる場合もあります。

 

例えば、退院後にスポーツや趣味を再開したい患者さんでは、通常の歩行だけでなく、より高い運動能力が求められる動作を練習する必要があるかもしれません。

一方で、日常生活で安全に移動できることが主な目標であれば、方向転換や段差の昇降、障害物を避ける動作などを優先することも考えられます。

 

重要なのは、すべての患者さんに速歩や走行、ジャンプを実施することではなく、患者さんが退院後にどのような生活を送りたいのかを踏まえて、必要な動作を選択することです。

また、走行やジャンプは歩行よりも身体への負荷が大きく、転倒や関節への負担につながる可能性があります。

そのため、実施する前に身体機能やバランス能力、疼痛の有無などを確認し、安全性を十分に検討する必要があります。

 

歩行が自立している患者さんに対しても、単に歩けるかどうかだけで判断せず、生活の中で必要となる移動能力を獲得できるように練習を進めましょう。

 

まとめ:歩行練習は目的を明確にして実施しよう

歩行練習では、患者さんが現在どの程度歩けるのかを評価するだけでなく、今後どのような生活を送りたいのかを考えながら、練習の目的を明確にすることが重要です。

 

例えば、自宅への退院を目指している患者さんに対して、歩行車を使用した練習だけを続けていても、退院後の生活に必要な移動能力を十分に獲得できない場合があります。

もちろん、自宅の環境や身体機能によっては歩行車が適していることもありますが、退院後にどのような場所を移動し、どのような動作が必要になるのかを考えたうえで、歩行練習の内容を検討する必要があります。

自宅内の通路の幅や段差、手すりの有無、トイレや寝室までの移動経路などを確認すれば、退院後に必要となる歩行能力や歩行補助具を具体的に考えやすくなります。

 

患者さんの生活を知ることが大切

患者さんの退院後の生活を把握するためには、本人や家族からの情報収集に加えて、必要に応じて家屋評価を実施することが重要です。

家屋評価では、住環境や生活動線、段差、階段、手すりの設置状況などを確認し、患者さんが自宅で安全に生活できるかを検討します。

こうした情報を踏まえることで、病院内で歩けることだけを目標とするのではなく、実際の生活に必要な歩行能力を獲得するための練習を考えられます。

 

また、歩行練習は、現在歩いていない患者さんに対しても、身体機能や全身状態などを評価したうえで実施を検討することが大切です。

歩行能力が低い患者さんでは、立位保持や重心移動などの基礎的な動作から段階的に練習を進める必要があります。

理学療法士にとって、歩行練習は日常的に実施する機会の多いリハビリテーションのひとつですが、患者さんによって適切な方法や目標は異なります。

患者さんの身体機能や歩行能力を評価し、退院後の生活を見据えながら、目的に合った歩行練習を実施していきましょう。