ICFはうまく書けましたか?
書けてない場合は、こちらの記事を参考に書き出してみてください。
ICFを書き終えたら、それを参考にして最も大切なゴール設定と考察へと移っていくんです。
ICFシートを書き終えた後、どのようにしてゴール設定と考察に繋げていくのかを分かりやすく解説します。
ICFからゴール設定をしよう!
ICFを書き終えたら、患者のゴールを決めることができます。
ここで気を付けなければならないのは「機能に着目しすぎない事」です。
よく学生が勘違いしがちですが、以下のようなゴール設定はダメです。
【避けるべきゴール設定】
- 歩行の安定化
- バランス能力の向上
- 10m歩行11.6秒以下になる
- BBS46点以上
これらは「機能的」なゴールですよね。
これでは、患者がどのレベルまで到達するのか分かりません。
「歩行が安定化したら患者の生活の何に繋がるのか?」「BBS46点以上だと患者が何が出来るようになるのか?」そういった所を無視しちゃダメです。
だからゴールは「生活・ADL」に焦点をあてて書く必要があります。
【提案すべきゴール】
- 歩行を安定化による独居生活できるようにする
- バランス能力を向上させて趣味のハイキングに行けるようにする
- 10m歩行のカットオフをクリアし職場までの移動できるようにする
- BBS46点以上にし、転倒リスクを軽減させる
こうしたゴール設定が必要になります。
そしてゴール設定は、「目的」と「期間」を明確にすべきです。
患者のホープ(希望)は情報収集の時点で聞いているわけですから、それに対してどのような問題点があり、どんな障害があるのかをICFシートで確認していきます。
【例】
- ホープ:買い物に一人で行きたい
- ニード:杖歩行の自立、荷物を持ってスーパーまでの移動、お金の管理etc
- ゴール:退院までに杖歩行自立
さて、以上の患者の情報からゴール設定をした後、もう一度ICFシートに視線を落としてください。
「活動」や「心身機能」、「環境因子」を見て、果たして本当にそのゴールが達成できそうでしょうか?
- もし達成できそうなら、どんな問題をクリアすれば達成できそうでしょうか?
- もし達成できなさそうであれば、どんな問題が原因で達成できなさそうでしょうか?
さぁ、「ゴール」に対しての「問題点」が浮き彫りになってきましたね。
次に、すべきことは「問題点抽出」です。
ICFを書き終えたら何が問題かを考えよう!(問題点抽出)
ICFシートを書き終えて、ゴールを設定すると様々な問題点が見えてきます。
【例】
- ホープ:買い物に一人で行きたい
- ニード:杖歩行の自立、荷物を持ってスーパーまでの移動、お金の管理etc
- ゴール:退院までに杖歩行自立
【上記を達成するための阻害因子】
- 長距離歩行困難
- 認知機能低下
- キーパーソンが自宅から遠い
- 独居etc
さぁ、この阻害因子を見て、あなたの立てたゴールは達成できそうですか?
- 達成できそうであれば、達成するために障害となっている問題点を挙げていってください。
- 達成が難しそうであれば、改めてゴール設定をしてください
以下に、達成できそうな場合と達成が難しい場合にどうするか?を解説していきます。
ゴールが達成できそうな場合
ゴールが達成できそうな場合は、今、なぜそのゴールが未達なのかを考えます。
障害となっている因子がいくつかあるはずです。
- バランス低下
- 杖歩行介助
- 中殿筋筋力低下
- 自宅に手すりが無い
- 独居etc
それを解決するためのプログラムを立てます。
プログラム立案は、次の項目で説明します。
ゴールが達成できなさそうな場合
ゴールが達成できなさそうな場合は、ゴール設定を修正します。
もう少し簡単なゴールにしたり、短期ゴールを設定したりします。
例えば、「買い物に一人で行きたい」というホープに対して「杖歩行自立」というゴールを立てたが、身体機能の低下により達成が困難である場合。
ゴール設定をまず自宅に変えるために「身の回り動作の自立」に変更したり、「居室内杖歩行自立」に修正します。
このように、長期的に見て「買い物に一人で行きたい」を達成するために必要である短期的な目標を設定することで、今後のリハビリプランが立てやすくなります。
ICFを書き終えたら治療プログラムを立案しよう!
ゴール設定をし、問題点抽出ができたら治療プログラムを立てます。
治療プログラムで必要なのは以下の3つ。
- 方法
- 期間
- 負荷量
この3つを明確にします。
例えば
- バランス低下
- 杖歩行介助
- 中殿筋筋力低下
- 自宅に手すりが無い
- 独居etc
という問題点がある場合、それを解消するための「リハビリの方法」を考えていきますよね。
まずはリハビリの軸となる「方法」を考えていきます。
杖歩行介助だったら、片足立ちや手ぶら歩行など。
筋力低下だったら筋力強化exなど。
でも、最初から最後まで同じリハビリをしても意味がないですよね。
だから「期間」を決めます。
杖歩行介助のリハビリ
- ~3day:平行棒内歩行
- ~7day:杖歩行
- ~14day:屋外歩行
- ~21day:手ぶら歩行
- ~退院:杖歩行自立
このように期間を決めることで、より細かな治療プログラムを立案することができます。
最後に、「負荷量」を決定しましょう。
初日と最終日まで同じ負荷量という事はあり得ないですよね。
重錘なら0.5kgから徐々に増やして行ったり、歩行練習なら数メートルから1kmくらいまで伸ばしたり。
方法、期間、負荷量を決めるのは非常に重要です。
この時も、ICFシートを確認しましょう。
- この患者が1kmも歩く必要があるのか?
- この患者は1kg持てれば問題ないのか?
ICFシートにヒントが隠されているはずです。
リハビリしにくい「障害」に対するアプローチ
ICFシートを見ると、アプローチしにくい項目があると思います。
- 独居
- 家に手すりなし
- 心配性
このような項目がある場合もありますが、それが原因で家に帰れない場合はアプローチする必要があります。
独居の場合は、なぜ独居が問題なのか?を考えます。
火の扱いが難しかったり、機能的に困難だったりいろいろあると思います。
そしたら、アプローチすべきは本人でなく、周囲の人間に対してアプローチします。
ヘルパーの利用を勧めたり、主治医に相談して家族に介護を頼んだり、デイサービスの利用を勧めたり。
ただ学生がそこまでするのは難しいので、指導者に「この方、独居は厳しいと思うのでデイの利用とか考えたんですが、どうでしょう?」と聞いてみると良いですね。
手すりに関しても、手すりなしで移動できるように練習をしたり、社会的資源(家屋改修サービス)を利用して手すりを付けたりもできます。20万円まで利用できるので、手すりくらいならまったく問題ありません。
本人が心配性な場合、どんなことが心配なのかを聞き出すことが必要です。
その不安を解消するためのプランが必要です。
(手すりの設置や福祉用具のレンタル、ヘルパーの利用など)
このように、リハビリ=運動して機能回復をする、と言うわけでなく様々なアプローチが必要であることを知ってください。
そして、何かわからないことがあればすぐ指導者に聞くことをおすすめします。
まとめ:ICFは「問題点抽出」「プログラム立案」に活用する!
ICFの活用方法は理解していただけたでしょうか?
ICFシートを埋めて終わりでなく、そこからが本当のスタートなんです。
ICFシートを活用すれば、患者の全体像が見えてきます。
その中から、阻害因子を見つければ、それを解消するためのプログラムを立案するだけなのでとても簡単。
それでも学生は難しいと思うかもしれませんが、ICFを使った経験が無いんだから難しくて当たり前。
まずは経験だと思って、バシバシ作成していく事をおすすめします。
ICFって「何を書いたらいいの?」と言う方は、こちらの記事をご参照ください。