治療の一環として『マッサージ』を提供している理学療法士も多いです。
ただ、マッサージというと「リラックスのため」「気持ちよくするため」というようなイメージも強いと思います。
果たして『マッサージ』ってリハビリとしての効果はあるのか?
学生が気になるマッサージの効果、目的についてお話しします。
理学療法士はマッサージという言葉は使えない
理学療法士は『マッサージ』をすることはできません。
学生の中には、治療プランの中にマッサージと書いて注意されたことがある人もいるかもしれませんね。
マッサージは『マッサージ師が施術するときに使える言葉』なので、理学療法士が使うことはできないんです。
理学療法士が実施するときは『リラクゼーション』という言葉を使います。
内容はマッサージなんですけどね。
この記事ではあえてマッサージとして記載していきます。
マッサージ(リラクゼーション)をする目的
理学療法士がマッサージをする目的は3つです。
- 患者のコンディションを把握する
- この後の運動を円滑にする
- 筋疲労を除去する
患者のコンディションを把握
マッサージによって『患者に触れる』ことで患者の体のコンディションを把握することができます。
- 体熱感はないか
- 筋は硬くなってないか
- 冷感はないか
- 腫れはないか
- 昨日との差異はないか
理学療法士が最初にマッサージから始めるのには、このような『触診による身体評価』の意味合いが大きいと思います。
実際に患者の体に触ることで、昨日の状態と比較し、今日の状態の把握ができます。
つまりマッサージは患者をリラックスさせる為じゃなく、評価するために実施しているんですね。
よくあるのが、熱感があるので体温を計ったら熱発していたり、触ったら痛みがあったので医師に報告したらリハビリ中止指示が出たなど。
患者に触れることで、患者の異変にいち早く気付くことが出来ます。
この後の運動を円滑にする
マッサージをすることで血流量を増加させ、筋や体の深部の体温を上昇させます。
そうすることで筋の収縮効率がよくなるので運動が円滑に行えるようになります。
準備運動みたいなものですね。
例えば、単に歩行や軽い筋トレ程度なら準備体操は不要かもしれません。
ただし、重錘を使った筋力強化やスクワットなどのCKCエクササイズ、階段練習など負荷の高い運動を提供する場合は準備体操は必要です。
マッサージをすることで筋を柔らかくし、怪我をしにくくすることが目的です。
また、マッサージをすることで特定の筋を動かしやすくできます。
大殿筋がうまく使えない患者に対し、大殿筋にマッサージをすることで刺激が加わり、筋収縮がしやすくなります。
歩行で内転筋の収縮が出ず、立脚中期に不安定となるなら内転筋をマッサージさせることで収縮を促せます。
マッサージ=弛緩させるのでなく、刺激を与えて収縮しやすい環境を作り出すという目的で実施することも多いんですよ。
筋疲労を除去する
筋に過剰な収縮を与えると、『乳酸』という物質が発生します。
その物質によって疲労感を感じ、筋肉痛や翌日の倦怠感に繋がるので、筋をマッサージしてその物質を取り除きます。
一般的な「マッサージ」や「リラクゼーション」の考え方と同じですね。
リハビリの最後にマッサージを実施することで老廃物を除去し、翌日も良いポテンシャルで運動を継続できるようになるのです。
マッサージの効果究明
マッサージの効果はすでに科学的に解明されています。
『SCIENCE TRANSLATIONAL MEDICINE』によると米国のハーバード大学で行われた動物実験によれば、マッサージは炎症を引き起こす免疫細胞や炎症物質を筋肉細胞から「洗い流す」ことで、筋肉を損傷したマウスの回復力を2倍にし、新たに再生する筋繊維の質もより強固になるとのこと。
これにより、運動後のマッサージの有効性が認められたと言えます。
マッサージ(リラクゼーション)の手技
- 擦る(軽擦法・強擦法)
- 揉む(揉捏法)
- 圧迫する(圧迫法)
- 叩く(叩打法)
- 振るわせる(振戦法)
擦る(軽擦法・強擦法)さする・けいさつほう・きょうさつほう
マッサージの基本手技で、指や手の平で目的とする部位・筋に対して滑らせるように擦ります。
基本的には末梢から中枢に向かって動かすことで、静脈還流量が増加することで老廃物の除去・除痛などの効果が見込めます。
揉む(揉捏法)もむ・じゅうねつほう
マッサージの基本手技のひとつで、筋肉や靭帯、腱を揉む方法です。
揉む、こねることで筋のポンプ作用を意図的に生み出すことで血流を増加させ、固まった筋の弛緩や外部刺激を与える事で動きやすい環境を作ることが出来ます。
ただ、刺激が強いのであまりやりすぎると筋線維の損傷(いわゆる揉み返し)が起きたり、炎症症状の悪化といったリスクがあることは覚えておきましょう。
圧迫する(圧迫法)あっぱくする・あっぱくほう
目標とする筋に対して垂直に圧迫するマッサージの基本手技です。
広い範囲のアプローチや、揉捏しにくい部位(内ももやふくらはぎなど)へのアプローチで選択されます。
揉捏と同様に筋緊張を緩めたり、痛みの原因の除去が期待できる上にリスクも高くないのでよく使われる手技ですね。
叩く(叩打法)たたく・こうだほう
いわゆる「肩たたき」ですが、理学療法士はあまり使いません。
よく美容師などが最後に肩をいい音でポンポンと叩いてくれますね、あれが叩打法です。
リズミカルに刺激を与え、マッサージされた部位の違和感や筋緊張をほぐす効果があります。
ただし、叩くことで伸張反射が起き、逆に硬くなってしまうリスクもあるので注意が必要です。
振るわせる(振戦法)ふるわせる・しんせんほう
患者の上肢や下肢の先端または筋を直接把持して細かく振ることで筋緊張を除去する方法です。
だいたい2~4ヘルツの速度で振ると効果が出やすいです。
まとめ
マッサージの目的
- 患者のコンディションを把握する
- この後の運動を円滑にする
- 筋疲労を除去する
マッサージの基本手技
- 擦る(軽擦法・強擦法)
- 揉む(揉捏法)
- 圧迫する(圧迫法)
- 叩く(叩打法)
- 振るわせる(振戦法)
単にマッサージをしても効果や目的を意識しないと無意味です。
マッサージの効果を理解しつつ、患者や利用者に『説明しながら』実行することでさらに効果的な物になっていきます。
たなんとなくマッサージしている理学療法士もおおいのですが、皆さんはしっかりと目的を持ち、マッサージをしていったいただきたいですね。