年齢:15歳
性別:女性部活:バレーボール
受傷日:7月初旬
受傷起点:ジャンプして着地したあと、後方にステップしようとして受傷
HOPE:7月2週目の試合に出場したい
治療:7月中ごろにACL再建術
このような患者が来たとして、どうすればいいと思いますか?
今回は、この方がどうやって手術をせずに競技復帰していくべきか、お伝えします。
ACL損傷で、バレーボール競技復帰する条件
サポーター・装具の装着
前十字靭帯(ACL)損傷をした場合、保存期間(手術までの期間)は基本的にサポーターや装具を着用します。
フィット感があり、頑丈なモデルを選びましょう。
女子中学生の場合は、こちらがおすすめです。
前十字靭帯に負担がかかるニーイン(膝が内側に入る動作)を防ぐスポーツ用膝サポーターです。
足先から履き膝上を巻くセミオープンタイプで、樹脂ステーと補助ベルトの構造により膝の前後・左右の動きをしっかりと補強します。
サイズは立位で、大腿周囲(膝蓋骨中心の上10cmの周径)と下腿最大位を測ってください。
2つのサイズにまたがる場合は、大きいサイズをお選びください。
※ 右用と左用がありますので注文の際はご注意ください。
疼痛コントロール
手術をする前に競技復帰するには、疼痛コントロールをします。
①サポーターの着用
前十字靭帯に負担がかかるニーイン(膝が内側に入る動作)を防ぐスポーツ用膝サポーターです。
②アイシング
運動後は熱を持つため、確実にアイシングしましょう。
部活動での運動以外にも、通学の際にもアイシングできると効果的です。
③痛み止めの使用
痛み止めにはいくつか種類があります。
①内服
薬局でも手に入ります。
医師から処方されたものがあれば、そちらを使用してください。
痛みの部位が明確でなかったり、すぐに痛みを取りたい場合に活用してください。
用法に従って服用してください。
②貼り付け
いわゆる湿布薬です。
ロキソニンが入っているものが効果があるようです。
痛む場所が限定的であり、激しい運動をしなければ、湿布薬の方が便利です。
③散布
痛みの範囲が広い場合は散布する方が使用しやすいです。
また、皮膚に直塗りつけるため、激しい運動をする時や、運動後に汗を書いていても使用できるのでおすすめです。
着地動作の獲得
手術をせずに競技復帰するには、着地動作を獲得しなければなりません。
主にニーインや膝崩れを予防する動作が必要です。
ACL損傷で最も避けたいのは、脛骨の前方突出と急激な膝崩れです。
そうしないと、損傷の悪化を招きますし、部活への復帰どころの話ではなくなってしまいますので。
それでは、着地動作の動作を確認していきましょう。
スクワット動作
スクワット動作は、着地動作においてめちゃくちゃ大切です。
- 椅子に腰掛けるように膝を曲げる
- 膝がつま先より前に出ない
この2つをマスターする必要があります。
こうすることで、バレーボールでの着地時に、脛骨が前方突出することを抑え、ACL損傷の悪化を防ぐことができます。
正しいスクワット動作は、こちらの動画が役に立つかもしれません。
これにより、膝崩れをするリスクを最小限に抑えます。
膝崩れとは、自分で制御できない膝の屈曲で、ACL損傷に最もダメージのある深屈曲を助長します。
ニーインをしない
ニーイン(knee–in)とは、膝を曲げた時に膝が内側に入ってしまう動作のことです。
特に、ニーイン&トゥーアウト(knee–in&toe–out)は、膝の負担を増大させるので、さけるべき動作の1つになります。
つまり、膝が内側に入って、つま先が外を向く姿勢にならないようにすべきです。
これは、どんなスポーツにも言えることです。
ACL損傷患者の試合時間
ACL損傷をしたスポーツ選手は、早急に手術をする必要があります。
しかし、この症例のように一生に1度しかない試合(中学生最後の引退試合)の場合、手術している暇はありません。
とはいえ、バレーボールの試合にフルゲーム出場することは難しいと思います。
だから、試合時間を限定して出場するのが一般的です。
- 5分〜10分の出場にする
- 1クウォーターのみの出場にする
- ワンポンとでの出場にする
いろいろと考えられるものはありますが、その患者の状態や、チーム状況に合わせて出場していただけると良いと思います。
ACL再建術を検討しているなら、ちょっとくらい無理して出場しても・・・
まとめ
ACL断裂や、ACL損傷は選手生命を脅かすほどの怪我です。
基本的には手術をおすすめしますが、なかなか踏み切れないアスリートも多いと思います。
その場合は、しっかりとサポーターで膝を固定し、受傷部位に負担をかけすぎないようにする必要があります。
今回はACL損傷についてお伝えしましたが、半月板損傷やその他靭帯損傷でも同じです。
学生生活最後の試合なので、我々も試合に出場してもらいたいと思っています。
だからこそ、しっかりと準備をして、試合に臨んでいただきたいですし、最高のパフォーマンスは発揮できないので、無理をせず試合に挑んでいただきたいと思います。