この記事では橈骨遠位端骨折のリハビリの評価と治療について解説していきます。
整形外科疾患ではわりとポピュラーな疾患なので、ぜひ覚えておきましょう。
橈骨遠位端骨折の評価
痛みの評価
痛みの時期(安静時・運動時・動作時)、質(ズキズキ・痺れる・疼く・走る)、強度を評価する。
リハビリでは痛みのない範囲での運動が必須なので、まずは疼痛評価が必要。
また、痛みの質によって神経の痛みや血管の痛みなどを特定できることもある。
変形
頭骨遠位端骨折では、骨変形を伴う事があります。
変形により、筋の走行が変化し、可動域制限や筋力低下につながることがあります。
左右を見比べて、健側と比べて観測がどんな変形をしているのか確認し、それによってどんな弊害が起こりうるのかを検討します。
筋の長さは、ほんの数ミリ違うだけで、動かしやすさは全然違います。
関節可動域
橈骨遠位端骨折では、手関節と指関節の関節可動域が強く障害されます。
- 掌屈
- 背屈
- 撓屈
- 尺屈
の4つはもちろんですが、手指の関節可動域評価も重要です。
- MP関節の屈伸
- IP関節の屈伸
- 指の開排
- 母指屈曲
- 母指外転
- 母指伸展
- 対立
- 示指と小指の小指
- 前腕の回内・回外
などの評価も必要です。
ADL・IADL
手関節が動かしにくいと、ADLやIADLにも影響が起こります。
- 食事動作
- 入浴動作
- 洗顔
- ボタンの着脱
などがメインで、その他にも
- 料理
- 洗濯物干し
- 車の運転
- 仕事
- パソコンのタイピング
等にも大きな影響があります。
ADL動作を評価しないと、理学療法士としては失格です。
絶対に確認しておきましょう。
握力
握力は生活の中でも重要な筋力です。
健側と比べて、どの程度のパワーがあるかを確認しましょう。
目標は、健側の70%程度です。
橈骨遠位端骨折の機能的な目標
橈骨遠位端骨折の機能的な目標は以下の通りです。
- 回外60°
- 掌屈と背屈30°
- 握力70%
この可動域と握力があれば、ADLはほとんど問題なく最低限行えます。
まずはこの数字を目標にしましょう。
ちなみに、リハビリテーション終了時の目標は
- 健側に比べ患側の手関節可動域80%
- 健側に比べ患側の前腕回内外90%
- 握力70%以上
だそうです。
橈骨遠位端骨折の術後リハビリテーションの流れ
手術をした場合は、以下のようなスケジュールに沿ってリハビリを実施していきます。
- 術後1日目:患部外のROM-ex
- 術後2~3日:手関節・指関節・前腕の愛護的な自動運動
- 術後1週目:手関節・指関節・前腕の積極的な自動運動
- 術後2週目:他動運動開始、握力強化運動開始
- 術後3週目:握力強化運動・前腕と手関節の筋力強化運動
- 術後6週目:体重をかけての手関節可動域運動
- 術後8週以降(骨癒合後):体重をしっかりかけての運動
運動指導(セルフエクササイズ指導)
リハビリ以外の時間でも、十分に運動を行ってもらう必要があります。
手指を動かすことの重要性(拘縮予防)をしっかりと説明し、必要であれば図や画像を渡します。
- 母指の運動:橈側外転・尺側外転・掌側外転・掌側内転・対立
- グライディングエクササイズ
伸展握り・鉤握り・握りこぶし - 手指運動
グーチョキパー・キツネ・OKサイン、1~5までの数字数え - ボール転がし
手関節自動運動を行う時のポイント
- 掌屈は、少しだけ尺屈方向の運動が伴う
- 背屈は、少しだけ撓屈方向の運動が伴う
- 前腕の回内外は、肩の代償運動に注意する
- 自主練習を習慣化させる
手関節の他動運動のポイント
- 背屈は橈骨手根関節が中心となって動く
- 掌屈は手根中央関節が中心となって動く
背屈のリハ「橈骨手根関節」の可動域練習
- 舟状骨と月状骨を片方の手で固定する
- 前腕遠位をもう片方の手で固定する
- 舟状骨と月状骨を関節面に沿って上下に動かす
掌屈のリハ「手根中央関節」の可動域練習
- 有頭骨を片方の手で固定する
- もう片方の手で舟状骨と月状骨を固定する
- 舟状骨と月状骨を関節面に沿って上下に動かす
握力強化運動・前腕と手関節の筋力強化運動
- 重要なのは撓屈と背屈の筋力
- 握力は内在筋を中心に強化する
積極的に取り入れるべき運動療法
- 洗濯ばさみつまみ(ピンチ力強化)
母指と他4指を順番に行う - 粘土をこねる
- タオル絞り
- セラバンド
- ハンドグリッパー
体重をかけての手関節可動域運動
6週を超えたら体重をかけたトレーニングに移ります。
壁を使っての腕立て伏せなどで、少しずつ荷重をかけていきます。
最終的には、床での腕立て伏せなどに移っていきます。
リハビリテーション終了の目安
- 健側に比べ患側の手関節可動域80%
- 健側に比べ患側の前腕回内外90%
- 握力70%以上
まとめ
橈骨遠位端骨折は、毎週リハビリの負荷量が変わっていきますので、常に状態に注意して介入します。
痛みが出ない範囲でのリハビリが重要となりますが、あまり愛護的にしすぎると拘縮になってしまう恐れもあるので注意が必要です。
患者のADLや、HOPEを捉え、それに合った理学療法を実施していきたいですね。