「姿勢の観察と分析をしようと思ったけどなんか上手くいかない」
「そもそも姿勢を見て何を評価するのかが分からない」
実習に来る学生は姿勢や動作を見るのが苦手な気がします。
そもそも、なぜ観察や分析をする必要があるのか?を分かっていないんですね。
まぁ学校でもそこまで深く教えていないでしょうし、姿勢観察の練習はROMやMMTに比べても練習はしてこないでしょうし。
だがしかし!
姿勢や動作の観察評価はかなり重要であり、それが患者のADLに直結することもすばしば。
そこで、今回は姿勢観察と分析に着目し、その方法とポイント、さらにはレポートやレジュメに書く際のコツもお伝えしていこうと思います。
【参考書】
動作分析できない・苦手な人向けのポイントと書き方はこちらの記事をご参照ください。
ちなみに、観察と分析の違いは以下の通り。
- 観察:自然な状態をそのまま客観的に見ること
- 分析:物事をいくつかの要素に分け、細かく分析すること
今回は立位姿勢でお話を進めていきますが、基本的に座位も臥位も同じです。
リハビリで姿勢の評価が重要な理由
リハビリで姿勢の評価が重要な理由はただひとつ!
姿勢観察・姿勢分析ができない人は、動作観察・動作分析ができないからです。
動作を起こすには姿勢が重要。
その姿勢を見れない人は動作が見れません。
理学療法士は動作のスペシャリストと言われていますから、理学療法士になるなら姿勢を観察できないと困ります。
姿勢を評価するポイント「姿勢の見方と方向」
姿勢を評価するには対象患者を基本肢位にして立たせます。
【基本肢位】
両足を前に向けて両上肢を下垂し、手のひらを内側に向けた姿勢
その際、重心線に沿って真っすぐ立たせるように、つまり『良い姿勢』を取ってもらいます。
良い姿勢を取ってもらわないと、再評価などで姿勢の再現性が無くなってしまいます。
間違っても安楽肢位で姿勢観察をしてはいけません。
姿勢観察の書き方
姿勢観察は観察する部位があらかじめ決まっています。
順番に観察し、記載していきましょう。
【姿勢で観察するポイント】
- 頭頚部
- 胸腰椎
- 胸郭
- 肩甲骨
- 上肢
- 骨盤
- 下肢
そして評価するポイントは以下の3つです。
- 前額面、矢状面、水平面から観察する
- 重心線を基本とした逸脱を観察する
- 左右の対称性を観察する
これらを、絵や矢印を用いながら表現していきます。
前額面、矢状面、水平面から観察する
3方向から各関節のアライメントを評価していきます。
- 屈曲しているのか、伸展しているのか?
- どちらに回旋しているのか?
などを観察していきます。
ここで注意して欲しいのが関節軸と面の関係。
- 頭部の屈曲…矢状面
- 頭部の側屈…前額面
- 頭部の回旋…水平面
- 肩甲骨の前傾…矢状面
- 肩甲骨の挙上…前額面
と、動きによって記載する面が変わります。
間違えないようにしましょう。
重心線を基本とした逸脱を観察する
重心線の通る位置は覚えていますか?
【前額面】
- 後頭隆起
- 椎骨棘突起
- 臀裂
- 両膝内側中央部
- 両内果中央部
【矢状面】
- 耳垂
- 肩峰
- 大転子
- 膝蓋骨後面
- 外果前方
ここに垂線を引き垂線から各ポイントがずれていないかを観察します。
その結果から、筋の状態やバランス反応を想像することができます。
正しいアライメントに沿って記載していきます。
左右の対称性を観察する
関節の位置は基本的に左右で差があります。
疾患や障害はもちろん、筋肉量や利き手、生活習慣によって左右差が生まれます。
その左右差を確認し、なぜその差が生まれたのかを予測することが重要です。
リハビリでの姿勢分析の目的と方法
姿勢の観察が済んだら、分析に移ります。
分析とは物事をいくつかの要素に分け、細かく分析することですから、姿勢をいくつかの方法で分析していきます。
分析方法は3つ。
- モーメントによる生体反応の分析
- 関節位置による筋収縮の分析
- その姿勢を取っている理由を分析
モーメントによる生体反応の分析
例えば体幹が右側屈していると、どのような反応が起こりそうでしょうか。
体幹が右側屈してると、頸部は立ち直り反応で左に側屈しそうですよね。
これが予測です。
では実際に対象者の頸部はどうなっているのでしょうか?
右側屈?左側屈?正中位?
それはなぜでしょうか。
それを考え、予想し、分析していきます。
運動力学の基礎的なところなので苦手な人も多いと思いますが、人間はバランスを取るために重心を支持基底面内に戻そうとします。
骨盤後傾で腰椎が円背だったらどのような反応が出そうですか?
- 頸部が屈曲して重心を前に移動させる
- 膝を屈曲させて重心を前に移動させる
こんな反応が出そうですよね。
なぜそのような姿勢をしているのか?をここで分析します。
関節位置による筋収縮の分析
関節の位置が重心線から逸脱しているということは、筋収縮によりバランスを取っているということです。
左方が挙上していれば左僧帽筋が過緊張しているでしょうし、膝が屈曲位であれば大腿四頭筋が過剰収縮しています。
これらを触診と合わせて実施し、どのような筋状態にあるのかをチェックしていきましょう。
そうすることで、姿勢不良は筋の持続収縮によるものだったり、痛みは姿勢から来るものだったりと予測が立てられます。
その姿勢を取っている理由を分析
なぜ対象者はそのような姿勢を取っているのかを分析します。
不良姿勢を取っているのであれば
- その姿勢が原因で痛みや愁訴を訴えているのか
- 痛みや愁訴が原因でその姿勢になっているのか
これを分析します。
例えば、腰痛患者の骨盤が前傾していたとしたら
- 骨盤前傾が下人で腰痛が発生している
- 腰痛が原因で骨盤を前傾させている
この解釈の違いでプログラム立案の方向性が変わりますよね。
この姿勢が原因なのか結果なのかを分けられるようにしましょう。
【背骨の問題の例】
【筋の問題の例】
姿勢観察を分かりやすく記載するために必要なのは『絵・図』
姿勢観察評価を上手く相手に伝えるためには、絵や図を利用します。
パワーポイントやペイントを利用して作成してもいいですし、実際に患者の写真を使っても良いです。
最も単純な作業としては棒人間を使うことですね。
手書きが最もラクですが、パソコンやスマホアプリを使っても書けるのでお勧めです。
絵や図に矢印を挿入し、『挙上』『回旋』など図中に入れていけば読み手も分かりやすいです。
まとめ:姿勢評価から動作評価へ繋がっていくからしっかり見よう!
姿勢評価ができない人は動作評価ができません。
姿勢は『構え』と『体位』から成り立っており、それが開始肢位となって動作が行われます。
動作のスペシャリストになるため、まずは姿勢評価をしっかりと行っていきましょう!
姿勢の評価が終わったら次は動作の評価へどうぞ!
その他、評価項目の対応策はこちらにまとめています。