この記事は『ADL・IADL』について記載しています。
「リハビリって機能回復すればいいんでしょ?」
「ADLとかIADLって作業療法士がやればいいんだよね?」
それ、間違っています。
理学療法士の仕事は患者の機能回復をさせることでなく、ADL能力を向上させることです。
ADLやIADLは作業療法士の技術だと思ったらとんでもない。
理学療法士が率先してADLを上げ、患者のQOLを上げていかないとこれからの時代の流れに取り残されてしまいますよ!
学生はADLを見ることが出来ません。
生活動作はなかなか難しいですからね。
でもADLを見れるようになると、実習先での評価がかなり上がります。
学生の内からそのような意識を持っていると、就職した時に有利になります。
まだまだ生活動作に着目できる理学療法士は少ないですから。
IADLを見ることができる。
これだけで理学療法士の武器になるので、活用しない手はありませんよ!
【参考書】
学生がADLとIADLを知らなければならない理由
理学療法学生がADLとIADLを知らなければならない理由は2つあります。
- 患者の希望を汲み、運動療法をより実践的に行うため
- 学生の中で差別化を図るため
①運動療法をより実践的に行うため
ADL、IADLを学ぶことで、運動療法の質が変わります。
今までは、歩けないから歩く練習をする、関節が曲がらないから関節運動をするという考えのもと運動療法を提示してきた理学療法士が多くいました。
しかしそれでは効率が悪く、歩けるようになったり関節が曲がるようになっても患者の満足度(QOL)は上がりませんでした。
患者のQOLを紐解いていくと、ADL能力の向上が根底にあります。
痛みを取りたいというHOPEの根底には、痛みを取って階段を上りたい、長い距離歩いて買い物に行きたいなどのADL・IADL動作があることを忘れないでください。
この患者のHOPEからQOLの低下の原因を具体的に掘り起こしプログラム立案することで、より短期間で患者のQOLを上げることが可能となります。
HOPEから問題点抽出し、プログラム立案をする方法はこちらの記事に詳しく書いてありますので、苦手な人はぜひ参考にしてください。
②学生の中で差別化を図るため
そして、2つめに『増えすぎた理学療法学生の中で差別化を図るため』です。
理学療法士はすでに22万人もいて、毎年1万人ずつ増えています。
つまり学生は、毎年1万人おり、その中には、就職できない学生も増えているようです。
理学療法士選ばれない理学療法士と言ったほうがいいでしょうか。
面接を受けても落ちたり、病院の求人がかなり減ったり…そうなったときに、やっぱり選ばれる理学療法士にならなければいけないんですよね。
学生は知識や技術の深さにそこまで差はないので、どこで差をつけるか?となったら知識の広さで差をつけるべきだと考えます。
冒頭でお話した通り、学生でADLを見れる人は少ないです。
だからこそ、ADLを少しでもモノにしていれば、それだけで他の理学療法士との差別化につながり、結果的に患者や病院に選ばれる理学療法士になっていくでしょう。
その筆頭が、ADL・IADLです。
一応学校で勉強もしているので、高次脳機能や嚥下機能、発達などに比べたら比較的参入しやすいと思います。
学生こそはADL・IADLを学び、介入していかなければなしません。
その為の方法をここでお伝えしていきますね。
ADLを向上させる方法
ADLを向上させるには、単に関節可動域訓練や筋力強化訓練、歩行練習をしているだけではダメです。
目指すADL能力に合った介入をしていきましょう。
その為にはまず動作分析です!
ADL動作を分析し、プログラム立案していく
ADL動作に介入するためには動作分析をしなければなりません。
動作分析の方法はこちらの記事をご参照ください。
さて、ADL動作は5つあるのを覚えてますか?
- 食事
- 排泄
- 更衣
- 整容
- 入浴
これらの動作を評価し、できない部分(やりにくそうな部分)を確認し、なぜできないのかを分析していきます。
例えば、大腿骨頸部骨折の患者のHOPEが『トイレに行けない』であった場合、トイレ動作の分析を行います。
動作を実際に行って貰うと、障害像が見えてきます。
- 体幹の屈曲ができず立てない
- 方向転換で患側に荷重させすぎてしまう
- 下衣の上げ下ろしでふらつく
などの問題点が浮き彫りになります。
そこで、なぜその動作ができない(やりにくい)のかを決定づけるため細かく評価していきます。
- 体幹の屈曲ができず立てない→股関節の屈曲角度と痛みは?
- 方向転換で患側に荷重させすぎてしまう→荷重量はどれくらいかけてしまっている?
- 下衣の上げ下ろしでふらつく→どのタイミングで、どの方向にふらつく?
これらの問題点を打ち消すことのできるプログラムを立てると、それが「プログラム立案」になります。
ADL練習のリハビリプログラム例
それでは、さきほどの問題点のリハビリプログラムを組んでみましょう。
- 体幹の屈曲ができず立てない→股関節ROM-ex、健側重心の立ち上がり練習、手すりを利用した立ち上がり練習
- 方向転換で患側に荷重させすぎてしまう→体重計で荷重量を意識させる、荷重させない方向転換練習
- 下衣の上げ下ろしでふらつく→立位バランス練習、動的バランス練習
これでOK。
プログラム立案なんて、問題点がしっかりと抽出できていれば全く問題なく立てることができます。
でも治療や時間経過で患者の状態が変化したら、またHOPEが変わるかもしれません。
その場合、また最初から評価しなおします。
理学療法士の仕事は、この問題点抽出をしていく繰り返しだと考えてください。
これをPDCAサイクルといい、デイリーノートでも活躍しますのでぜひ参考にしてみてください。
そうやって患者の変化を確認しながら、徐々にADL拡大をし、HOPEをかなえていくことで患者のQOLも向上していくんです。
このプログラム立案の方法はこちらの記事に同じ症例でお話をしていますので、ぜひご参照ください。
理学療法学生は患者の本質を掴んだ問題点抽出を意識すべき!>>>
IADLを向上させる方法
IADLの理学療法の方法も、ADLの理学療法の方法と全く同じです。
まずはIADL上で起こる問題点を抽出します。
問題点抽出の方法は以下の通り。
- 患者のIADL動作を確認する
- そのIADL動作がなぜできないのか調べる(ROMやMMTで数値化する)
- 問題のある箇所に理学療法介入をしていく
そうやって出てきた問題に対し、プログラム立案し改善を図っていきます。
例えば、洗濯物を干すというIADL作業ができない場合、いくつかの原因が挙げられるはずです。
- かごに入った洗濯物を移動できない
- ピンチ動作の弱化
- 肩関節屈曲角度の低下
- 易疲労性による耐久性低下
- 立位保持困難
- 長時間上肢挙上困難
その患者の原因をここで挙げていき、それに対する介入をしていきます。
もちろんここで挙げたのはほんの一例なので、問題点はもっとあるかもしれませんし、もっと問題は限局的かもしれません。
IADL練習のリハビリプログラム例
それでは、さきほどの問題点のリハビリプログラムを組んでみましょう。
- かごに入った洗濯物を移動できない→洗濯物の重さを計り、その重さの物を運ぶ練習
- ピンチ動作の弱化→指の随意性運動、握力強化練習、洗濯ばさみを使ったピンチ動作練習
- 肩関節屈曲角度の低下→肩ROM運動、自動運動、棒体操、体操指導
- 易疲労性による耐久性低下→立位保持練習、自転車エルゴメーター、ティルトテーブル
- 立位保持困難→バランス練習、歩行練習、下肢筋力強化練習
- 長時間上肢挙上困難→血圧・心拍数評価、運動負荷テスト、上肢筋力強化練習、pully運動
かごに入った洗濯物を移動させる練習は、濡れた衣服の重さを想定します(あたりまえですができない学生が多い!)
そして5kgであればその1.5倍くらいの重さ(7.5kg)で練習します。
予想される重量より重いもので練習することで余裕が生まれ、家での洗濯物運び作業もラクにできるようになります(これもできない学生が多い!)
当然、近所のスーパーまで徒歩5分だったら、5分歩けてもダメ。リハビリはその倍は歩く練習しましょうね。
ADL評価のカットオフ参考値
ADLの評価はBIとFIMです。
それぞれのカットオフ値ですが
- BI:85点以上
- FIM:運動項目58点以上
とされているらしいので、参考にしてみてください。
詳しくはこちらにカットオフ値がまとめてあるのでご参照ください。
ADL・IADLを見ることで学生の価値が急上昇する!
学生がADL・IADLを学び、実践に取り入れることでリハビリの質が向上(患者のHOPEを早く達成できる)し、かつ周囲の学生との差別化を図れます。
指導者から高評価を得たいならADLを考えるのは必須。
病院も、ADL評価やADL運動ができない理学療法士より、できる理学療法士のほうが嬉しいのでますます差は広がっていくでしょう。
まだまだADL・IADLに着目した理学療法士は多くありません。
いまこそ、ADL・IADLを学び、実習で取り入れていき4月の入職に備えるべきです。
自信を持って「ADLができます!」といえる理学療法士になってほしいと願っています。